第一三共の挑戦、AIエージェントを相棒にしてデータドリブン創薬研究の「次のボトルネック」を解く
「Google Cloud Next Tokyo 26」レポート
製薬会社の関心は「DMTAサイクルの自動化」から「仮説生成」へ
2026年7月時点で、世界数十社の製薬会社がCo-Scientistを先行利用している。第一三共もまた、仮説生成プロセスでAIエージェントがどこまで使えるのかを検証するべく、EAP(Early Adopter Program)に応募した。EAPでのCo-Scientist活用は、メンバー選定から始まったという。最初に集まったのは、オンコロジー薬理を専門とする研究員の中でも、ADCが専門の研究員、TPD(Targeted Protein Degradation:標的タンパク質分解)が専門の研究員、合成化学が専門の研究員、バイオインフォマティシャン、研究企画担当など、計15名のメンバーである。
参加した研究員たちはCo-Scientistを利用し、毎週のGoogle Cloudとの定例ミーティングでの議論を通して、有効な活用方法を探った。Co-Scientistの利用にあたっては、一つの制約を設けている。それは、「第一三共独自のデータはCo-Scientistの学習材料として提供しない」というものだ。岡田氏に続いて登壇した、同社 国本亮氏は、2つの方法で実施した検証について説明した。
一つは、レトロスペクティブ型検証と呼ばれるものだ。第一三共側で検証実績があり、既に結果を知っている研究テーマをCo-Scientistに与え、同じ結論を導き出せるかを検証するものになる。そして、もう一つはサイエンティスト評価型検証と呼ばれるもので、今取り組んでいる研究テーマのアプローチをCo-Scientistと一緒に考える検証方法だ。本来であれば、実験での定量的評価を行うべきだが、今回はCo-Scientistの機能を定性的に評価する形にとどめているという。
講演では、がん領域での治療仮説の生成を例に、EAPで試したことが紹介された。まず、プロンプトには、日本語よりも高い精度が期待できる英語で入力。その上で、Co-Scientistに期待するアウトプットは「新規治療標的」「併用戦略」「生物学的根拠」「患者選択バイオマーカー」「前臨床検証プラン」の5種類とした。併用戦略を加えているのは、新しい治療標的あるいは治療薬が出てきたとしても、単独で治療が完結することは稀で、どのような組み合わせが効果的なのか、その選択が重要になるためだ。
実際の使い方は次のようになる。まず、研究員は何をやりたいか、Co-Scientistに調査する内容を伝える。その際、関連データを提示し、評価基準も設定しておく。必要事項を与えると、Co-Scientistはリサーチ目標を作成して提示。研究員は、その妥当性を確認して問題がなければ、次のステップである仮説生成に進む。
検証においてCo-Scientistは、約6時間をかけて183個のアイデアを生成してくれた。それぞれのアイデアには参考文献のリンクが付加されており、評価とランク付けも自動的に行う。上位のアイデアについては、リサーチプランとプランごとに期待される研究成果まで示してくれる。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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