第一三共の挑戦、AIエージェントを相棒にしてデータドリブン創薬研究の「次のボトルネック」を解く
「Google Cloud Next Tokyo 26」レポート
「Google Co-Scientist」の試用でわかった、優位性と改善点
Co-Scientistが生成するアイデアや順位付けの根拠は、読んでいて面白く、幅広い視点から大量のアイデアを得られたと国本氏は好意的に評した。一方で、丁寧に読み込むには非常に時間がかかるという。そこで、“AI疲れ”で消耗しないよう、Google Cloudが提案したのは「Google NotebookLMに出力させて、アイデアを整理してもらう」ことだ。実際に試したところ、NotebookLMはすべての仮説を大きく3つの分類軸で整理し、数分のうちにチーム内で共有できる状態にまで加工してくれた。その結果を見ながら、研究員メンバーはアイデアの関連性を見出すなど、より理解を深めることができたという。
EAP終了後、参加メンバーからアンケートをとったところ、高く評価された点は「仮説の壁」「視点の多様性」「新しい発見」だった。企業所属の研究員のため、どうしても長年研究してきたテーマや方向性に影響を受けてしまう。だが、第一三共が有する独自データは提供しないという制約を設けたことで、新鮮な視点から大量の仮説を得ることができた。また、標的探索やバイオマーカー探索が得意領域とわかったことも収穫だったという。一方で、新しいモダリティの探索など、苦手領域も見えてきた。「文字情報はともかく、構造式を学習していないからかもしれない」と国本氏は見解を示した。
第一三共の総合評価として、国本氏は大きく3つを挙げる。まず、第一三共のコンテキストを理解させる必要がある、とわかったことだ。EAPにおいては制約を設けたが、独自データを利用することで、より良い結果が得られる可能性があるという。つまり、「外部の研究員」としては及第点でも、第一三共の研究チームに参加するためには、共通知識を有していることが前提になるということだ。
次に、分子デザインや新しいモダリティの探索のように、今後の発展が期待できる領域が明確になったこと。そして、Co-ScientistのUXには改善の余地があることだ。NotebookLMに結果を出力してアイデアを整理するという機能は、標準提供されていない。研究員がAI疲れに陥らないためにも、膨大なアイデアを整理するプロセスに改善を加えることで良くなるはずだ。
とはいえ、GeminiやDeep Researchと比べても、Co-Scientistには幅広い発想力がある。アイデアに煮詰まったとき、新鮮な発想からアイデアを収集してくれる。自動化の次に対峙する「仮説生成」におけるボトルネック解消に寄与できるか、Co-Scientistには真価が問われているようだ。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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