クライアント仮想化がもたらす真のメリット
この手のソリューションはこれまで、金融業界の事例が多かったんですけど、最近はそれ以外の業界での案件が増えてきていると思いませんか?
増えていると思います。日立が手がけた事例で言えば、多くの拠点を抱えているある流通業のお客さまではクライアント環境を集中管理して、各拠点にはシンクライアント端末だけを置くようなソリューションがマッチしました。
後は、埠頭やコンビナートなどの運輸系ですね。
製造業もそうですが、現場用にわざわざ頑丈な専用端末を開発するのではなくて、シンクライアントで十分対応できるようになってきていますね。後は、シトリックスが以前から取り組んでいる公共系でも根強いニーズがあります。
最近の新しい流れとしては、サービス事業者が「DaaS(Desktop as a Service)」の形態でクラウドサービスを提供する例が出てきています。ある企業では既にサービスを始めていますし、ほかにもシトリックスのコンサルタントが参加しているプロジェクトが幾つか進行しています。今後はDaaSのような形で、特にSMB(Small and Medium Business)マーケットに対して仮想化のメリットを提供するサービスが増えてくるのではないかと思います。
なるほど。ただし実際にはデスクトップ環境だけではなくて、その上に何らかのアプリケーションが載って初めて業務で使えるものになりますから、DaaSだけではなくてそれにSaaS(Software as a Service)のようなものを組み合わせる形のソリューションになるのでしょうね。
未来の話をすると、個人的には「PCを持ち歩かずに済む世界にならないかな」と思っているんです。職場と自宅と出先、この3個所に設置してあるPCから常に同じデスクトップ環境と同じデータにアクセスできるのが理想です。これだけ大量のデータが氾濫する中、本当に生産性を高めようと思ったら、こういう方法しかないと思っています。
なるほど。それは日立の社内では既にほとんど実現できているのかもしれません。自分のデスクと、会議室などの共用スペース、それに各拠点、あと人によっては自宅にも端末を置いていて、認証デバイスを差し込めばどこからでも自分の環境につなぐことができるようになっています。あとは、オフラインでのモバイル環境をどうするかですね。
これまでのシステムは、どちらかというとセキュリティや運用管理の効率を優先させるあまり、ユーザーに不自由を強いてきた面があったかと思いますが、今お聞きしたようなことが実現できれば、ユーザーの利便性を向上させるための手段ともなるわけですよね。
これまでは、IT部門でクライアントPCを配布したら「はい、おしまい」で、ユーザーにとっての本当の課題が見えていなかったところがあると思います。これから私たちベンダーやSIerがお客さまにクライアント仮想化を提案していくにあたっては、セキュリティや運用管理面の課題についてはもちろんのこと、Windows 7への移行に関しても「ユーザーはWindows 7を使って何がしたいのか?」ということをきちんと問い掛けていかなくてはいけないと思います。