技術革新とコスト低下が同時進行
ところで、企業がクライアント仮想化の導入を具体的に検討する際には、やはり導入コストが気になるところだと思いますが。
クライアントOSのライセンス価格に関しては、2010年7月から大幅にリーズナブルかつシンプルなライセンス体系になりました。
それまでは、仮想デスクトップでWindows OSを利用する場合、「VECD」というライセンスを購入する必要がありました。また、ソフトウェアアシュアランス(SA)対象のクライアントを仮想化する場合にも、別途「VECD for SA」という追加アクセスライセンスを購入する必要がありました。VECDとVECD for SAともに、利用期間に応じて課金されるため、継続的に利用すると結果的にクライアントPCよりも運用費用が高くついてしまうことも多く、クライアント仮想化導入を踏みとどまらせる一因にもなっていたと思います。
このVECDが2010年7月から、「VDA」というライセンス体系に変わりました。VECDと同じく利用期間に応じて課金されますが、かなりリーズナブルなライセンス価格になっただけでなく、ソフトウェアアシュアランス(SA)対象のクライアントは追加料金なしで仮想デスクトップへアクセスできるようになりました。これで、クライアント仮想化の導入におけるライセンス費用のハードルはかなり低くなると思います。さらに、クライアントライセンスだけでなくサーバライセンスに関しても、2010年4月からシトリックスとディスカウントキャンペーンを実施しています。
2010年末まで、マイクロソフトと共同でアグレッシブなキャンペーンを実施していきます。またそれ以降も、何らかの形でクライアント仮想化の導入を推進していく施策を打っていく予定です。ただ、われわれとしてはただ単に「安い」というだけではなく、今までクライアント仮想化についてあまり知らなかったユーザーに、できるだけそのメリットを多く知ってもらいたいというのが一番の思いです。
クライアント仮想化が注目を集めてきている背景には、ネットワークのインフラが整備されてきたという背景もあるかと思いますが、それと同時にデータ転送プロトコルの進化も大きな要因ではないでしょうか?
その通りだと思います。シトリックスのソリューションでは、画面データの転送には「ICA」という独自プロトコルが使われていますが、その上位レイヤーに「HDX」というテクノロジー群があります。これは、仮想化環境でもPCと同様のリッチなユーザー体験を提供するためのもので、3D画像の処理やプラグアンドプレイなどを最適化できるようなさまざまな技術が含まれています。さらにHDXは常に進化していて、次期バージョンではプリンティングやログイン処理の高速化などの新しい機能が追加される予定です。
仮想化環境では意外とプリンティングがネックになることが多いのですが、そのような新しい技術が出てくることによって、システム設計の柔軟度も日に日に上がりつつあるわけですね。
クライアント仮想化を取り巻く環境は大きく変化しています。確かに新規導入という一時的な観点で見れば、設計や設備投資などの面で負担が大きく感じられることでしょう。しかし、導入後もシステムに関わる有形・無形のコストの支払いが続くことは皆さんもご存知の通りです。数年スパンで資産を運用した場合は、金銭的なコストや運用の負荷で通常のクライアントPCよりも優れた結果を出すでしょう。管理者の皆さんがこれまで頭を悩ませてきた課題を解決できる手段として、クライアント環境の見直しを行う際には、一度は検討の俎上に載せるべきだと思います。
なるほど。皆さん、本日はどうもありがとうございました。