硬直的になりがちなウォーターフォール型に代わるシステム開発手法として注目を集めるアジャイル開発だが、いざ実行に移してみると「契約のカベ」にぶつかるケースが多いという。「弊社ではアジャイル開発の案件も多数手がけているが、一括契約ではどうしても限界がある。社内に漂う閉塞感をなんとか打ち破りたいと考えた。これまで、ECサイト構築などでレベニューシェア型のサービスはあったが、情報システムの分野ではまだまだ新しい取り組みといえると思う」と今回の契約形態を発案した永和システムマネジメントの木下氏は語る。
新サービスでは、システムはレンタルという形で提供されることになる。もちろん、ASPやSaaSと違って個別にユーザーの希望に応じたシステムが構築されるが、プログラムの所有権自体は永和システム側が保有し続ける。ユーザー側はシステムの利用を開始した後に月額レンタル料として構築費用と保守費用を支払うことになる。ロジックの再利用によるコスト削減もある程度視野に入れているものの、業務ノウハウなどについては秘密保持契約などで対応するという。
システムの規模に応じて5段階に設定されている利用料は、最も小規模なシステムに適用される「プランSS」がひと月あたり150,000円、最大の「プランLL」では1,500,000円(仮)。継続して4年以上サービスを利用すると利用料が半額になる。サーバーやネットワークなどの機器についてはユーザーが準備する必要があるが、月額利用料に上乗せする形で用意されているレンタルオプションを利用すれば、システム利用開始までに初期投資は一切かからない。
利用開始後の仕様変更やサポートは、利用プランに応じて毎月支給される「チケット」を使って行う。チケット1枚あたりに依頼できる作業の目安は1人日程度、例えばプランSSでは毎月1枚支給される。「小さな変更を毎月行っても良いし、何ヶ月かに一度、まとめて大きな変更をするような使い方も可能」(木下氏)で、必要に応じて別途チケットを購入することもできる仕組みだ。
システムによっては新しい契約形式が適さない場合もあるため、要件のヒアリングを行った上で受託の可否を決定する。基本的にアジャイル開発を念頭に置いているため、ウォーターフォール開発で対応できる基幹系システムなどは対象外になる可能性がある。また、Webサービスなどのようにあらかじめ利用中止を計画に含むような案件はコスト回収モデルの設計上引き受けることが難しいため、既存の契約形式での対応を提案するという。
月額利用料という形をとることによって品質や満足度を担保している本契約だが、任意のタイミングで利用を中止することもでき、違約金や解約手数料といった費用は一切生じない。データベースに蓄積されたデータを除いて、レンタル提供を受けていたハードウェアやソフトウェアを永和システム側に返却して契約終了となる。システムの売却希望なども予想されるが、「最終的に一括請負と差異がなくなってしまう上に、費用的なリスクを一方的に背負い込むことになる」(木下氏)ため、今のところ応じる予定はないという。
まずは、「プランSS」に限定したトライアル期間(2010年11月11日~12月10日)で2~3件の受注を目指す予定だ。