ワークとライフのシーソーゲーム、WIN-WIN求めてキリギリス風末路
レストランにて注文の際に、
「ライフとワークのどちらかをお選びいただけますが?」
「えっ…… ワ、ワークを……」
18時間の皿洗いにコーヒーもついて890円!(時給が)
悪くない。なかなか悪くない。そう自分に言い聞かせながら
心地よい労働の疲れで重くなった足を家へと向かわせたのでした。
「今あなたが落としたのはワークですか、それともライフですか?」
「私はプロの釣り師で、落としたのは命より大事な特注の
釣り竿ですから、そのどちらでもあると言えます」
「手榴弾を使って魚を捕る方法もありますが」
「湖の主的にそれはアリなんですか?」
「そこはまあ、魚心あれば手榴弾」
「手榴弾の意味がまったくわからない」
「おかえりなさい。ワークにする、それともライフ?」
「いま気付いたけれど、ふたつの言葉を合わせると
『ワイフ』という単語が出現するのだなあ」
「きょうはお疲れなのね」
「ああ、ワークやライフや青い稲妻が僕を責めるのでね」
「『青い稲妻』は上司を意味する暗号なのね」
ワークとライフが、どちらが先に旅人のコートを脱がす
ことができるか、競争することになりました。
ライフが旅人の右耳から古典的な人生訓を得々と語って聞かせる一方、
ワークは、左の耳からビジネス啓蒙書的なスマート仕事術を
矢継ぎ早にインストールします。
気付けば旅人は、脱いだコートを枕にして熟睡していました。
4月下旬なみの陽気と気象庁もいう、あたたかな春の日でした。
以上のように、
ワークとライフにまつわるちょっとイイ喩え話を作ろうという試みは
これまでのところことごとく失敗に終わっています。
しかし我々はまだあきらめてはいません。
ワークとライフの黄金比を発見するために、
あくなき探索を続けてまいる所存です。
万が一消息が途絶えた場合は、お察しください。
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倉田 タカシ(クラタ タカシ)
「ネタもコードも書く絵描き」として、イラストレーション、マンガ、文筆業、ウェブ制作、Adobe Illustratorの自動処理スクリプト作成など、多方面で活動。
イラストの他に読み札も手がけた「セキュリティいろはかるた」はSEショップより発売中。
河出文庫「NOVA2-書き下ろし日本SFコレクション」...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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