SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Data Tech 2024

2024年11月21日(木)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

お困り日誌

#033 「ここまでは打ち合わせ通りです」(アフリカ象に踏まれながら)


「ここまでは打ち合わせ通りです」(アフリカ象に踏まれながら)


その部屋には、窓がひとつもありませんでした。
時は21世紀後半、郊外の、とある住宅の地下室です。

この小さな密室で、3人のティーンエイジャーによって
ある秘密の儀式が執り行われていたのです。
それは、「打ち合わせ」でした。

21世紀初頭の現在ではそれなくしては生活が成立しないのに、
21世紀後半には跡形もなく消え失せているというものが
いくつかあります。
たとえば、ふつうの家屋にはもはや台所は存在しません。
家で料理をするという習慣が完全に失われてしまったからです。

複数の人間がひとつの場所に集まって行う
「打ち合わせ」もまた、慣習としてそんな振る舞いが
かつて存在したことさえ、すでに忘れられていたのです。
理由は言うまでもなく、ネットワークの発達です。
高度な即時コミュニケーションが可能になった結果、
集団としての意思決定は、あらたまった話し合いの必要もなく
いつのまにか自然になされているようになっていました。

しかし、まったく新しい概念を打ち出したいとき、
あるいは、大河の流れに磨かれた丸石のように
角ひとつないコンセンサスを形成したいというようなときに、
「打ち合わせ」と呼ばれる古代の儀式が必要になると
彼ら未来の21世紀キッズは考えたようなのです。

そこで彼ら3人は、
(ちなみに、3人の内訳は、やんちゃなリーダータイプ、
おっちょこちょいな食いしん坊、はにかみやさんのサイコパスです)
電波すら通さぬ地下深くの密室で、何度も激しく
お互いの頭部をぶつけあい、さまざまな色と形の閃光が
視界の周辺に炸裂するスペクタクルをリアル体験していたのでした。

つまり、明らかに大きな勘違いをしていたのでした。

彼らがやっていたことは、打ち合わせというよりは
「鉢合わせ」とでもいうべきものでした。

彼らは完全に間違っていたのですが、
にもかかわらず、自分たちがなにかに近づきつつある、
なにかを掴みつつあるという確信は強まる一方でした。

衝撃がついに設計強度を超え、3人の強化ガラスの頭蓋骨が
同時に砕け散ると、3つの脳髄が勢いよく放り出され、
空中で合体して、おおきなひとつの脳髄になりました。
円盤状の、ちょっと変わった形の6Pチーズのような
その大脳髄は、発光し、回転しながら日暮れの空へ
飛び出してゆき、誰の目にもとまらぬうちに音速を越え、
成層圏を離脱して、警察官に補導され、教師に反省文を
書かされて、それぞれの親にこっぴどく叱られました。
ひとりは懲りて、ふたりは懲りず、
10年後にひとつの会社が誕生します。
22世紀の始まりを牽引することになる新しいテクノロジーが、
この小さな会社から生まれることになるのです。
「つまり、打ち合わせはとても大事なのです」
数十年後、記念講演で、ひとりがそのように得々と語ることになります。

失われた台所についても同種のエピソードがあるのですが、
ここでは割愛させていただきました。
しかし、台所の重要性はあらためて語るまでもないでしょう。
 

          「お困り日誌」一覧はこちら 

 

 

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
お困り日誌連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

倉田 タカシ(クラタ タカシ)

「ネタもコードも書く絵描き」として、イラストレーション、マンガ、文筆業、ウェブ制作、Adobe Illustratorの自動処理スクリプト作成など、多方面で活動。
イラストの他に読み札も手がけた「セキュリティいろはかるた」はSEショップより発売中。
河出文庫「NOVA2-書き下ろし日本SFコレクション」...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/2807 2011/01/12 20:48

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング