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#038 夏休み特別ロードショー・のろしのレイテンシ


夏休み特別ロードショー・のろしのレイテンシ


クラウドサービスなのに、通信回線が狼煙(のろし)。
かつて、そういうものが存在していました。

狼煙そのものは光の速さで情報を伝えます。
しかし、狼煙通信のプロトコルはきわめて複雑で、
レイヤーはおよそ30層あり、また、パケットをひとつ
送信するのに通常1時間ほどを要します。
狼煙回線における「パケ死」とは、パケットをすべて
送信し終える前に担当者が寿命を迎えることを意味しています。

狼煙通信は2030年代にもっとも盛んでしたが、
2028に勃発した全面核戦争からの復興が世界的に進むにつれて
廃れてゆき、2050年ごろには完全に消滅したと考えられています。
という夢をみました。
もちろん、ここでのクラウドとは、あのまがまがしい
マッシュルームクラウドのことではありません。
「群衆」を意味する、「crowd」と綴るほうの「クラウド」であり、
数万人の民と同数のそろばんからなる
人海戦術的仮想計算機サービスです。

クラウドひとつない空の下、クラウドに思いをはせています。

築50年の木造家屋である我が家は、唯一のクーラーが壊れてから
2年が経過しており、予想外の猛暑となったこの夏、
住民の生命を維持する能力が20パーセント程度にまで低下しています。

クラウド型サービスには
大きく分けて入道雲系とうろこ雲系の2種類があり、
その特徴としては、

入道雲系:
・大トルク
・腐りやすい
・返事は元気だが話をちゃんと聞いていないことが多い
・主成分は泡立てた卵白で、微量の重金属をふくむ
・「お金がなかなかたまらない」と愚痴りながら
 紙幣をむしゃむしゃ食べていたが、たしかに
 腹にはたまらなさそうだった(目撃者の話)
・宇宙の風に乗る

うろこ雲系:
・コンサバ
・はがれにくい
・本当は「できません」と言いたいときに完全に白眼になり
 全身をマナーモードの携帯電話のように振動させながら
 扇風機の風に向かって話すような声で
 「お茶の子さいさいでちゅよ」と答える癖がある
・パスモに対応
・宇宙の風に乗る

以上のようなものであろうと想像されています。(筆者に)
筆者は、そのほかにも色んな想像をおこなっていると
考えられていますが、現在は人間としての能力が
20パーセント程度にまで低下しているため、
充分なアウトプットを観測できなくなっています。

宇宙の風は、そのような筆者の木造家屋のなかも
さわやかに吹きぬけてゆくのですが、
空気を動かすことはできないため、とくにこれといった
変化は観測できていません。
そのような現状ではありますが、筆者はクラウドサービスの
未来を信じ、思索を続けていると考えられています。
その成果については、いつかまた当欄でご報告できることと思います。
ご清聴ありがとうございました。
 

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この記事の著者

倉田 タカシ(クラタ タカシ)

「ネタもコードも書く絵描き」として、イラストレーション、マンガ、文筆業、ウェブ制作、Adobe Illustratorの自動処理スクリプト作成など、多方面で活動。
イラストの他に読み札も手がけた「セキュリティいろはかるた」はSEショップより発売中。
河出文庫「NOVA2-書き下ろし日本SFコレクション」...

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