SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Data Tech 2024

2024年11月21日(木)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

お困り日誌

#050 デスマ博士のデスマ塔からデスマのマーチが聞こえてくるよ


デスマ博士のデスマ塔からデスマのマーチが聞こえてくるよ


デスマといえば、そう、デスマーチ。
納期まぢかの呪われた開発プロジェクトが、
たくさんの負のミラクルにくるくると翻弄されて
いつまでたっても納品にこぎつけることが出来ぬまま
スブラキ肉を削ぐように社員たちの体力を削ってゆき、
ときに正真正銘の死人を例の川の向こうに納品してしまう
ことすらあるという、ありふれて恐ろしいディザスターです。

デスマといえば、そう、デスママを忘れてはいけません。
デスママとは、プロジェクトがデスマ化する時にかならず
現われる、社員行きつけの飲み屋のママのことです。
どのようにしてか、彼女らはデスマの気配を敏感に察知し、
死人の出る前に飲み屋のツケを回収しようと、
(ときには複数で編隊を組んで)社内にのりこんでくるのです。
デスママが現われることがデスマの発生条件であるともいえ、
いわばプロジェクトにとっての死亡フラグである彼女らは
実際に頭に旗をたてていることが多いのですが、
しかしそれを指摘すると「そんなものは無い」とかたくなに
認めようとしないため、旗はデスマに瀕した社員たちの
見る幻なのではないかと考える向きもあります。
旗には黒いドクロのマークが描かれていると言われます。

デスマといえば、そう、ですます調で話す社員から先に
倒れてゆくという迷信がなぜか昔からつよく信じられており、
デスマに突入したプロジェクトにかかわる社員たちは
上司に失礼でない範囲でですます調を脱するべく、
いろんな語尾を考案するのだといいます。
「○○でござる」「○○だにゅん」「○○でゴロロロロロロロ」
最後のは単に喉に痰がからんだ音だそうですが、
もちろんこれらの珍妙な語尾が全員の精神的消耗を誘い、
「もうだめです」というふつうの言葉を残して、次々と
社員たちは斃れてゆくのだといいます。

デスマといえば、そう、デス麻雀の略でもあります。
麻雀がときに深刻にデスの要素を帯びる遊戯であることは
よく知られていますが、ここでいうデス麻雀は、あまり
人間の死とは関係のないものです。
デス麻雀は、麻雀のデスマスクなのです。
徹夜マージャンの果てについに全員が意識を失った時点での
卓上の牌の散乱状態を石膏で型取りし、日付時刻をそえて
ギャラリーに展示したというものです。
芸術って、すばらしいですね。

デスマといえば、そう、「デカン高原でスケートボードに
乗ったひとりの男がマンドリンで殴り殺される」という
一部で有名な長編小説のタイトルの略称でもありますね。
物語は、殺人の一部始終を目撃していたスケートボードによって
語られるという、ありふれたひねりを与えられています。
打撃のインパクトで粉々に砕け散ったマンドリルの破片を
あびたことによって超自然的な力を得たスケートボードは、
生まれ変わったらどんな絵をもったボードになりたいか、
延々と語り続けることを作者によって許されます。
かたわらで、殴り殺された男は一言も発さず横たわり続けます。
しかし、彼の着ている上着には英字新聞が全面にプリント
されていて、スケートボードが時折ここから単語をランダムに
読みあげると、それらが半分ほどは意味の通る文章となり、
読者に謎解きへの興味を提供しつづけながら、特になんの
結論にも至らず、しだいに支離滅裂になってゆくのです。
物語の終盤、喋りに疲れたスケートボードは、風の後押しを
うけて、ゆるやかな下り坂をしずかに滑りはじめます。
たくさんの牛を追い越し、ときにその背中を乗り越えて、
ボードはどんどんスピードをあげてゆきます。
ついにボードはあるビルの窓に飛び込み、室内で唸りを上げていた
サーバラックに突き刺さって、壮絶な火花をあげて炎上し、
ひとつのプロジェクトを頓挫に追い込みます。
最後の瞬間、超自然的な力によって、ボードは、自分が
息の根をとめたのが、遅延に遅延を繰り返していた、とある
大規模プロジェクトであったことを知るのです。
ここにおいて判明するのは、「インドにもデスマーチはある」という
想像上の事実です。
デスマーチは死そのものと同じようにありふれており、
どの国にも、死への行進を余儀なくされる社員たちがいるのでしょう。
川をわたるとき、彼らはお財布ケータイで渡し賃を払います。
 

          「お困り日誌」一覧はこちら 

 

 

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
お困り日誌連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

倉田 タカシ(クラタ タカシ)

「ネタもコードも書く絵描き」として、イラストレーション、マンガ、文筆業、ウェブ制作、Adobe Illustratorの自動処理スクリプト作成など、多方面で活動。
イラストの他に読み札も手がけた「セキュリティいろはかるた」はSEショップより発売中。
河出文庫「NOVA2-書き下ろし日本SFコレクション」...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/2824 2011/01/12 20:59

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング