この調査は、2010年10~12月に行われたもので、2011年のCIOの課題について全世界で2,014人以上のCIOから回答を得たという。回答を寄せたCIOは、世界50カ国のあらゆる業種の企業、政府、公共機関に所属し、そのIT予算の合計は14兆円以上に達するとしている。また、日本では、EXPメンバーを含む、さまざまな産業の企業に所属する76人のCIOから回答を得たとしており、回答企業のIT予算の合計は1兆8,000億円超に上り、1社当たりのIT予算は250億円程度だという。
この調査の結果、日本のCIOと世界のCIOの間には、次のような特徴が見られるという。
・2011年のIT予算について、前年度に比較して増加すると回答したCIOは、世界では40%に上ったのに対し、日本では21%だった。一方で、減少すると回答した比率は、世界では16%、日本では26%。前年比のIT予算増加率の平均値は、世界では1.0%の増加に対し、日本では0.2%の増加という結果だった。
・CIOの成功にとって最も重要な要因については、「ビジネス成果」および「ビジネス知識」と回答した比率が、世界では66%に上るが、日本では46%と半数に満たない。一方で、「IT組織以外の部門や経営層との関係性」と回答した比率が、世界では22%、日本では33%に上った。つまり、日本のCIOは、自身の成功について、ビジネス成果よりも社内の交渉力を重視している傾向が見られる。
・IT戦略がビジネス戦略とどの程度関連しているかとの問いに対して、「極めて密接に関連している」および「密接に関連している」と回答したCIOは、世界では81%に上るのに対して、日本では68%という結果だった。
・自社のコンピュータによる情報処理量の半数以上をSaaS環境に移行するのはいつ頃と予測しているかという問いに対して、世界では53%が「2015年までに移行するであろう」と回答しているのに対して、日本では同回答は25%にとどまっている。一方で、「2021年以降」もしくは「移行不可能」と回答した割合は、世界では19%であったのに対し、日本では43%にも上った。
このように調査結果に対して、ガートナーでは次のように分析しているという。
日本のCIOは、ITがビジネスに及ぼす影響力を明確なビジネス成果として表すことを、世界の平均的なCIOに比べて不得手としており、他部門や経営者との交渉力でカバーする傾向がある。また、日本のCIOは、世界のCIOに比べてIT戦略をビジネス戦略にうまく合致させられないことや、IT戦略そのものを説明する能力に長けていないなどの理由も重なり、その結果、経営トップやビジネス部門からのIT部門への期待感が薄れてしまい、IT投資が世界平均に比べて消極的になっている。
■プレスリリース
http://www.gartner.co.jp/press/html/pr20110303-01.html