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実践知とリーダーシップ― 知識創造理論がシステム開発に及ぼしたもの

野中郁次郎×江渡浩一郎

製造業の新製品開発モデルを体系化した「知識経営理論」で知られる野中郁次郎氏。組織の中から知を生み出す仕組みとして、氏が提唱したSECIモデル(セキ・モデル)は、アジャイルソフトウェア開発手法のひとつである「スクラム」にも大きな影響を与えた。一方、もうひとつのアジャイルソフトウェア開発方法論であるXP(Extreme Programming)や、Wikiの起源として、建築家クリストファー・アレグザンダーによる手法「パターンランゲージ」を見出したのが江渡浩一郎氏だ。SECI モデルとパターンランゲージ—商品開発論や建築論を源に様々なシステムが生まれた歴史的経緯をひも解きながら、イノベーションの鍵を探った。

「競創」の時代 ~交差する2つの理論をめぐって~

― まず、今日こうしてお話を伺うことになった経緯を簡単に私のほうからお話してみたいと思います。今年の1月に「イノベーション スプリント 2011」というイベントがありました。「競創時代の新製品/新サービス開発とは」というスローガンのもと、アジャイル開発が生み出す企業のイノベーションについて、いくつかのセッションが行われました。そこで野中先生とアジャイル開発スクラム理論のジェフ・サザーランド氏が講演し、私もそこでお会いしたことがひとつのきっかけとなりました。

 はい。イノベーションスプリントの講演では、サザーランドと対話を行いました。なぜそういうことになったかっていうと、僕らが考えた「スクラム」理論を元に、ソフトウェア開発手法「スクラム」を考えたのが彼だったんですね。サザーランドがひとつの例にしたのが、日本企業の新製品開発です。

一橋大学大学院 名誉教授 野中郁次郎氏
一橋大学大学院 名誉教授 野中郁次郎氏

通常、製品開発の現場は、各フェーズが分断されている状態なのですが、スクラムの場合、フェーズが重なったり、メンバーの一部はいくつかのフェーズに参画している。そうやって、みんながオーバーラップしていくというのが、スクラムです(図1)。当時、スクラムによる新製品開発の例としては、富士ゼロックスの「FX-3500」や、キヤノンの「オートボーイ」、ホンダ「シティ」などがありました。

 ただ、スクラムは、もう20 年以上も前に発表した理論です。僕は、製造業から波及したスクラム理論が、今そんな風に注目されているなんて全然知らなかったんですよ。去年の4 月に、平鍋健児さんがやって来て、キーノートスピーチをしてくれという。そこで、サザーランドのアジャイル・スクラムの原点はSECIモデルとスクラムの概念なんだといわれて初めて知ったんです。

 サザーランドと会った時、彼がグッと詰まるんですね。なんで詰まるのかと思ったら、「ずっとお前に会いたかったんだ」と。これには、こちらもジンときましたね。びっくりしましたし、おもしろかったですね。

図1:スクラムアプローチ

― 野中先生のスクラムから、サザーランドのアジャイル・スクラムという流れがある。私も、このとき、野中理論が今こうして活きていることを知り、とても刺激を受けました。一方、私は、集合知についての研究をしています。ひとつの例としてWiki があるのですが、Wiki が生まれた経緯について調べていたところ、アレグザンダーのパターンランゲージに行き着いたわけです。アレグザンダーの理論は、建築業界では必ずしも受け入れられたわけではないのですが、プログラミングの世界には大きな影響を与えています。

 基本的には、僕らが言っている「知識創造理論」と、アレグザンダーは全く関係ないんです。ただ不思議と共通するところというのかな、通じる部分もある。僕は実は、アレグザンダーって、原典を読んでもよく分からないんだけど(笑)、彼の場合は、それまで演繹モデルのツリー構造でやってきた都市開発を、こう、ゴシャゴシャっと、ダイナミックにやろうとしたわけですよね。パターンランゲージはプロセスの中で普遍的なパターンを作り上げていくわけですから、SECI モデルで言うところの、「共同化(暗黙知の共有)」と「表出化(暗黙知から形式知への変換)」といえるでしょうね。というわけで、ルーツは全く違うんだけど、オーバーラップする部分はある、と。

― アレグザンダーも、自身の理論がソフト開発に転換されたことには驚きだったようですね。

 彼も僕と同じように、コンピューターなんかまったく使わないのになんで?って思ったんでしょうね(笑)

次ページへ続く

 

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SECIモデルと「場」

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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

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