多様化するビジネスを阻害するデータの信頼性問題
企業を取り巻く経済環境のグローバル化が加速している。インフォマティカの山本哲也氏は、多様化するビジネスストラテジーを表すキーワードとして、グローバリゼーションに加え、統合、成長、業務の効率化、統制(ガバナンス)を挙げた。
日本企業が海外の売上比率を上げるために海外進出を加速するのと同時に、規模の拡大や展開を早めるための合併や企業買収も増えている。企業のビジネス推進にとってITは切り離すことのできない重要なファクターだ。例えば買収先のコアビジネスとのシナジー効果を早く享受するためには、ITの統合も早める必要があるからである。
また企業成長のための新規顧客獲得と同時に、既存の顧客を維持するためには新たなサービスを提供できる体制が必要であり、そこでポイントとなるのは顧客データベースの管理である。海外でビジネス活動を展開する際には、現地の文化を尊重し、様々な法制度にも対応しなければならない。一方、コアでないビジネスについては、アウトソースすることも一般化しており、そこでもガバナンスが必要になっている。同時にパートナー企業同士のネットワークを結び、自動化を図ることが必要となってくる。最終的にはビジネスの俊敏性を実現するため、会社が置かれている状況をリアルタイムに把握し、それを次の戦略に役立てることも求められる。
そこでキーとなるのが、企業が所有するデータの活用だ。しかし山本氏は「信頼できるデータの欠如が、企業活動における重要なビジネスの実現を阻害している」と指摘する。ITが急速に普及する中で、システムが各事業部で別々に構築された結果、社内には多種多様なデータが存在する。最近ではSNSに代表されるビッグデータと呼ばれるものが急増し、企業のクラウドコンピューティングへの対応が、この状況を加速していると考えられる。しかし、クラウドコンピューティングにも課題がある。クラウドのデータを統合する場合、それが本当に信頼できるデータなのか、適切なタイミングで取得できているか、なかなか認識することが難しい。多くの企業はデータの一貫性、マッピング、アクセス性、適時性、保護、精度においてさまざまな課題を抱えているのが実情だ。
また、データ統合アプローチについての調査では、87%の企業がデータ統合に手組みで取り組んでいると報告されている。統合するデータは生産系のシステム、Webなど多種多様であり、影響度なども考慮しながらの作業は、手間が大きくなる。山本氏は手組みによる統合の問題点として「新規システム統合における負担の大きさ」、「柔軟性に欠けるハンドコードの統合ポイント」、「一時データの統合方法」の三つを挙げた。