ITインフラとアプリケーション両方に精通するDBAの重要性
このような危うい現状を打開するための手段として、三澤氏は、「技術者のスキルを向上させ、DBA(Database Administrator)という職種の位置づけを大きく引き上げる」ことを挙げている。実際、欧米と日本においては、DBAというものの位置づけが明らかに違う。DBAは、欧米においてはかなり技術者のキャリアとして価値が高い。当然ながら高度なスキルが要求される職種でもある。
日本ではどうしても、開発に重きがおかれてしまう傾向がある。そのためもあり、DBAはオペレータにプラスアルファした程度の仕事にしか見られていないのが現実であろう。つまり、日本でDBAは運用に分類され、その中の1要素的な扱いなのだ。本来DBAは、開発と運用の間に位置するようなスキルが求められるものであり、ITインフラのことも、その上で動くアプリケーションのこともよく知っていないと勤まらないものだと三澤氏は説明する。
「トラブルの原因は、開発は開発だけ、運用は運用だけしか見ていないから発生するものも多い。そのような状況なので、いざトラブルが発生するとどちらが悪いというような話になってしまう」(三澤氏)
多くの場合、運用サイドは、どうしてもコンサバティブになる。新しい技術を採用しトラブルが発生した際に責任をとりたくないためだ。そして、データベースを含むITインフラについては、運用サイドが担当する。結果的に新しい技術は採用せず時代遅れのシステム構成のままとなってしまうのだ。さらには、運用をアウトソーシングしてしまう例も多い。そうなれば、企業においてITインフラをより良いもにしていこうというモチベーションすらもなくなってしまいかねない。一方、開発サイドは、業務プロセスを重要視する。その上でコスト削減も行わなければならないので、叩く部分はインフラということになる。そうなると、ITインフラ部分が貧弱な時代遅れなシステム環境ができあがってしまうというわけだ。
日本においても本来のDBAが活躍するようになれば、これが改善されるはずだというのが三澤氏の意見だ。ITインフラとアプリケーションにまたがる部分で適切な判断を下し、将来性のある提案をするのがDBAの役目だ。アプリケーションに対しリスクのないよう新技術を適切に採用できれば、運用管理の手間も削減され中長期的にはシステムのTCO(Total Cost of Ownership)も低減できるはずなのだ。そして、きちんと設計されていれば、データベースの構造には企業のプロセスが確実に反映される。つまり、DBAはデータベースを通して企業のプロセスも見ることになるのだ。