データベースのことを十分に知らない技術者
「この10年間ほど、SIもエンドユーザーも、データベースを勉強することがほとんどなかった」―日本オラクル 常務執行役員 テクノロジー製品事業統括本部長 兼 クラウド&EA 統括本部長の三澤智光氏の話は、IT業界の現状に対し、少し厳しい話題から始まった。
2000年以降、エンタープライズITの世界はビジネスプロセスの時代に入った。ITシステムにおいては業務プロセスが中心であり、それをいかにしてシステム化するかに注力することになったのだ。そのためSI会社もエンドユーザーも、教育するのはITインフラに関わるところではなく、ほとんどが業務プロセスの部分に偏ることになったのだ。
ところが、いざ業務プロセスをERPパッケージなどでITシステム化し運用を始めると、さまざまなトラブルに直面する。その多くはITインフラに起因しており、そのせいでプロセスがうまく回らないというもの。つまり、業務プロセスの制御をきっちりと行おうとすれば、じつはITシステムのインフラの部分が極めて重要なはずなのだ。
たとえば、業務システムにおいてデータベースの性能が出ないがためにバッチ処理に多大な時間がかかることがある。これに対し、ほんの簡単なデータベースチューニングを施せば、性能が改善し問題を解決できることが多々あるとのこと。「メーカー側もそういった情報を伝えきれていなかった」と三澤氏は自省する。
かつてOracle Databaseには、複雑で難しいというイメージがあった。これに対しMicrosoft SQL Serverは簡単に利用できるということで、それを優位性として打ち出してきた。たしかにOracle7のころは、インストールするのでさえ十分なスキルを持った技術者でなければままならないこともあった。しかし、その後はバージョンが上がる度に改良が加えられ、ここ最近はOracle Databaseもずいぶんと簡単に扱えるようになった印象がある。簡単に使えるようになったがために、あまり深くデータベースのことを知らずともシステムはそこそこ問題なく動いてしまうようになったとも言える。
ところが、Oracleがターゲットとしているような大規模なシステムでは、十分にデータベースに配慮していない安易な使い方では、先に指摘したような問題に直面することになる。
「Oracleはある意味で社会インフラに近いところのシステムをターゲットにしている。そのようなシステムのためには、当然ながらITインフラに関する高度な技術が必要になる。にもかかわらず、びっくりするくらいOracleのことを知らずに大規模なインテグレーションを行っている例がたくさんある」(三澤氏)