7月29日、東京・ベルサール秋葉原において翔泳社主催のテクノロジー・カンファレンス「ビジョナリーズ・サミット 2011」が開催された。午前中に行われた基調講演では、元MicrosoftのエンジニアでUI Evolution Inc.ファウンダーの中島聡氏と、グーグル シニアエンジニアリングマネージャの及川卓也氏によるプレゼンテーションが行われ、悩める日本の技術者たちに向かって力強いメッセージが送られた。本稿では基調講演の中島聡氏の講演の内容をお伝えする。
自分の未来を決めるのは自分自身 - 中島聡氏

Microsoftのエンジニアとして米国本社でも活躍し、退社後は米国でベンチャーを起業、成功体験も失敗体験も数多くあわせ持つ中島氏の講演のタイトルは『ITエンジニアとしての生き方』。登壇して開口一番、聴衆に向かって「こういったイベントで重要なのは、僕の話を聞くことなんかよりもネットワーク作りにある。良い人材にめぐり会ったり、自分を売り込んだり、良い質問をする人を目ざとく見つけたりしてネットワークを作り、拡げていってほしい」と呼びかけた。中島氏が拠点を置く米国では、カンファレンスとはほぼ100%、「ネットワーク形成の場所」と同義語だという。
なぜ技術者がみずからネットワークを作ることが大事なのか。それは幅広い人脈が自分自身のキャリアビルドを助け、そして視野を広くもつことにつながるからだ。企業に属している立場であれば、つい、自分は自分の仕事だけをやっていればいい、責任は上司や会社が取ってくれる、という考えになりがちだ。だが、これからの時代、そういった狭い世界だけに閉じこもっていては、中国やインドといったパワーのある国の技術者たちと対等に渡り合っていくことはむずかしい。「10年後の自分の生活レベルが、インドや中国のエンジニアよりも上か下かを決めるのは、会社の上司でも政治家でもない、あなた自身である」- ここで中島氏が言いたいのは、インド/中国と張り合うことではない。日本の技術者ひとりひとりが自分の足で立ち、自分の頭で考え、自分の責任の下で行動しなければ、何も変わらないということを理解してほしいという。
「日本はたしかに特殊な事情がいろいろあって、現状はよくない。でも、上司が悪いから、政治家が悪いから、と文句を言っていても何も変わらない。10年後を決めるのは自分自身だけ。だから"自分が責任をもってがんばろう"という人がたくさんいる会社や国は必ず強くなる」(中島氏)
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五味明子(ゴミ アキコ)
IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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