オムロンがグローバル化に向けて着手したIT構造改革
1933年創業という長い歴史を持つオムロン株式会社は、国内外に3万5,000人以上の従業員を抱えるオムロングループの中核となる企業だ。2011年3月現在の売上高は6,178億円、うち半分は海外市場が占め、海外子会社に勤務する従業員数は2万5,000人近くに上る。この数字を見るだけでも、同社がグローバル化をいかに強く推進しているかがわかる。
加えてオムロンはこの6月、代表取締役社長に49歳の山田義仁氏が就任、それに伴い大幅に役員人事も刷新された。主力の制御機器部門ではなく、ヘルスケア部門出身の若い山田氏が新社長に抜擢されたのは、同氏がグローバル事業での経験が豊富であることが大きいと言われている。また、新社長就任とほぼ時期を同じくして、10カ年の長期経営構想もスタートした。文字通り"新生・オムロン"として、全社をあげてグローバルでのビジネスに勝機を見出そうとしている姿勢が伺える。
この新しい経営体制を支えるのが、オムロンが数年前から着手してきたグローバル化に向けての"IT構造改革"である。西阪氏はこのIT構造改革の狙いとして
1.ITコスト関連の総枠を圧縮する
2.事業変化に対し、柔軟にスピードをもって対応できるシステムとその構築/運用
3.基幹アプリの陳腐化/ノウハウ継承リスクを解消し、信頼性の高いシステムとする
という3つを掲げ、これを実現するために「30年前にメインフレームで構築されたレガシーアプリケーションを再構築し、プロセス改革とともにスピードと柔軟性を兼ね備えたオープン系のシステムに全面的に切り替える」という取り組みを開始したという。
ここでポイントとなるのは、プロセス改革とIT改革をセットで行ったところだ。
ITシステムの大幅な刷新にあたり、この2つをばらばらに実行してしまうと、プロジェクトそのものが失敗してしまう可能性が非常に高くなる。西阪氏は講演の途中、何度か「仕組みの中に手順を入れる」という言葉を繰り返したが、グローバルで全体を俯瞰する必要があるからこそ、ITにも、決められたプロセス(仕組み)以外では動かないとするほどの統制(ガバナンス)がとれていることが重要になってくる。