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BigData時代を乗り切るストレージ

エンタープライズ・ストレージの最新トレンド―ユーザーに求められる新たな要件と課題


迫られる事業継続/災害対策の再考

 次にトピックを事業継続/災害対策(BC/DR)に移そう。言うまでもないことだが、3.11の東日本大震災を契機としてほとんどの日本企業がBC/DR計画の再考を迫られている。今までに想定していた条件の多くが覆ってしまったからだ。

 第1に、きわめて広範囲にわたる災害のリスクを検討しなければならなくなっている。従来型の考え方では、主データセンターから数十キロの距離に遠隔代替サイトを設けることが一般的だったが、現時点では数十キロが十分に「遠隔」ではないというリスクを考慮しなければならなくなった。

 第2に、ブラックアウト(広域停電)や屋内退避命令などのリスクの可能性が生じてきた点がある。いずれも、日本企業が今まであまり想定してこなかったタイプのリスクだ。さらに、一部の外資系企業が実際に行なったように営業拠点の全面移転なども考慮しておく必要があるだろう。

 BC/DRには、事業の再開を迅速に行なうという局面とデータの喪失を最小限に留めるという局面がある。もちろん、どちらの局面も重要だが、企業の存続性にとって真に重要なのは後者だ。時間とコストをかければ事業の再開はほとんどの場合に可能であるが、喪失したデータの回復はいかに時間とコストをかけても不可能だからだ。その意味でも、BC/DRにおけるストレージの位置づけは重要だ。

ストレージによる事業継続/災害対策

 ストレージにおけるBC/DRソリューションの中心は、リモート・レプリケーションにある。ネットワーク経由でデータを遠隔地にあるストレージにコピーするということだ。レプリケーションも古くからある考え方だが高速ネットワークの価格低下と共に適用範囲が広くなっている。同期型でデータを更新することも原理的に可能だが、性能上のペナルティが大きいことから、広域災害を前提としたリモート・レプリケーションでは、データを非同期で更新する手法を取らざるを得ないだろう。

 なお、ティアリングにおける場合と同様に、レプリケーションをデータベース・レベルで行なうという選択肢、さらには、アプリケーション・レベルで行なうという選択肢もある。データベース内のデータはDBMSが最もよく理解しており、アプリケーションのデータはアプリケーションが最もよく理解しているのでこれらの手法が有効なケースもある(例えば、アプリケーション的に重要性が低いことがわかっているログデータをレプリケーションの対象にしないなどの設計を採用することができる)が、フラットファイルに格納された「ビッグデータ」も対象にした、より汎用的なレプリケーションを実現するためにはストレージの階層での対応が必要になるという点はティアリングの場合と同様だ。

 BC/DRのシナリオにおいてはテープ装置の存在も無視できない。HDDの低コスト化によりバックアップ媒体としてのテープの重要性は下がっているが、アーカイブ媒体、特に、災害発生時のデータ回復における「最後の砦」としてのテープの重要性は変わることがない(図4)においてテープをストレージ階層の最下層に置いたのはそれが理由だ)。

 また、パブリック・クラウドによるBC/DRも注目を集めている。特に、自前で代替データセンターを構築したり、事業者が提供するフルサービスのBC/DRソリューションを採用するだけの予算を有しない規模の企業にとっては、コスト的に魅力的なソリューションとなる可能性がある。BC/DRソリューションの提供を前面に打ち出しているクラウド事業者も増えてきている。

 ただし、ストレージ容量に基づく従量制の料金を採用しているパブリック・クラウド・サービスにおいて、すべてのデータの複製をクラウド側に置く形態を取ると、ストレージ・コストが非現実的なものとなる可能性がある。特に、「ビッグデータ」を扱う環境ではこれは重要な考慮点だ。重要度が相対的に低いデータはテープ媒体の遠隔サイト保存等で維持し、災害時に緊急に必要とされるデータだけをパブリック・クラウドに置くハイブリッド構成を取るなどの綿密な計画が必要とされる(図5)。

図5:ストレージによる事業継続/災害対策の選択肢

ユーザーが取るべきアクション

 本稿の最後に、ユーザー企業がストレージの領域において短期的に取るべき行動計画について提言したい。

 ストレージ・テクノロジーの進化のペースはきわめて速い。例えば、SSDのように、数年前にはコスト的に非現実的だったソリューションがあっという間に魅力的な選択肢になることも十分にあり得る。ユーザー企業は、ストレージ・テクノロジー評価のプロセスの頻度を上げるべきだ。1年に1度ではなく、1 年に複数回の再評価が必要であるかもしれない。

 また、ストレージ・テクノロジーがもたらす市場機会を十二分に活用するためには、ストレージに格納するデータそのものを戦略的資産として捉えることが不可欠だ。“what to do”型の自動化を行なう場合であっても、そもそも企業内のデータ要素をどのように扱うべきかのポリシーが確立していなければ宝の持ち腐れだ。同様に、BC/DRにおいても業務面から見たデータの重要性に基づいたリカバリ目標がなければ適切なテクノロジーを選択することはできない。このようなポリシー決定はテクノロジー上の課題ではなく、経営や業務上の課題だ。

 ポリシー決定のプロセスには、複数部門間で発生する政治的衝突の調停などのやっかいな課題がつきものだが、この課題を克服して企業内データ管理のポリシーを明確に決定し、最適なストレージ・テクノロジーとのマッチングを実現できた企業は、強力な差別化を維持できることになるだろう。

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この記事の著者

栗原 潔(クリハラ キヨシ)

株式会社テックバイザージェイピー 代表、金沢工業大学虎ノ門大学院客員教授日本アイ・ビー・エム、ガートナージャパンを経て2005年6月より独立。東京大学工学部卒業、米MIT計算機科学科修士課程修了。弁理士、技術士(情報工学)。主な訳書にヘンリー・チェスブロウ『オープンビジネスモデル』、ドン・タプスコッ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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