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クラウドの本質をひたすら追求していく―さくらインターネット社長 田中邦裕氏インタビュー


 ここ数年、クラウド市場は急速な伸びを見せている。海外はもとより、国内でもクラウドサービスを提供する事業者が増えてきた中、データセンター業界の革命児さくらインターネットがいよいよIaaSの提供に乗り出した。同社が考えるクラウドとは一体どのようなもので、どんな戦略を描いているのだろうか。代表取締役社長の田中邦裕氏に話を聞いた。

石狩データセンター開設と「さくらのクラウド」の提供

 さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中邦裕氏
▲さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中 邦裕氏

─ さくらインターネットは昨年11月、北海道石狩市に大規模郊外型データセンターを開設しました。これまで、都市型データセンターを中心にサービスを展開されてきたさくらインターネットが、このたび郊外型データセンターを新たに設けた狙いはどこにあるのでしょうか。

 弊社のビジネスには「サーバー事業者」と「データセンター事業者」という2つの側面がありますが、これまではサーバー事業者としてサーバーのメンテナンス性などを重視して、東京と大阪にデータセンターを設けて自社サーバーを運用してきました。しかしここ数年、ビジネスの規模が拡大するに従って、ラックスペースや電源設備への投資額の増大や、あるいは変電所の容量制限による電力不足など、大都市エリアでデータセンターを運営する上での困難さが目立ってきました。

 こうした問題を一挙に解決する手段として、電気と通信回線が引きやすくて、ラックスペースや空調装置の段階的な拡張が可能な広い土地に郊外型データセンターを設けることを考えていました。折りしもちょうどその頃、北海道庁さんから熱烈な誘致を受けたのですが、冷却に有利な冷涼な土地で、しかも災害も少ないという北海道ならではのプラスアルファのメリットに魅力を感じました。そこで、これらのメリットを勘案した上で、最終的に北海道の石狩市にデータセンターを新設することに決めました。

─ 石狩データセンターの開設と同時に、パブリッククラウドサービス「さくらのクラウド」の提供を新たに開始しましたが、郊外型データセンターでクラウドサービスを運営するメリットはどこにあるのでしょうか。

 クラウドは設備の集約度が高いので、コロケーションや専用サーバーサービスほど場所や設備の制限を受けません。従って、スペースや電源設備という観点では、都市型も郊外型も実はさほど差はありません。事実、最近では都市部にクラウドサービス用のデータセンターを設ける事業者が増えてきています。ただし、都内にあるデータセンターの価格は今乱高下していますので、サービスの価格と品質を維持し、かつスケールを拡大しながら長期的にサービス提供を継続していくためには、郊外型データセンターの方が有利だと思います。

─ さくらのクラウドは、現時点ではパブリッククラウドサービスとしては後発になりますが、どのようなユーザーのどんなニーズをターゲットにしているのでしょうか。

 想定しているユーザーは、これまで弊社が提供してきたレンタルサーバーや専用サーバーのユーザーと基本的には変わりません。これらのサービスはもともと、「IT 系の新興企業が初めて借りるサーバー」という位置づけだったのですが、2、3年ほど前からこれが他社の安価なVPS(仮想専用サーバー)やクラウドに置き換わってきました。こうした状況を打破するために、2010年からVPSサービスを開始して、一定数のユーザーを取り戻すことには成功しました。しかし、ユーザーに柔軟なスケールメリットを提供するためには、やはりVPSよりクラウドの方が適していると当時から考えていました。従って、VPSサービスの開始当初から、クラウドサービスへと至るロードマップはすでに描いていました。

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要件に応じてクラウドとオンプレミスを適切に使い分けることが重要

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この記事の著者

吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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