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新興・途上国の都市化に起因する新たな問題が世界中を巻き込んでいく
前回の記事では、個人の働き方や企業のあり方を従来と一変させる、歴史的にも産業革命以来といえるような変化の時代を迎えているという話をしました。
産業革命的な変化という意味では、現在の新興・途上国で起きている変化は、まさに先進国が産業革命以降、20世紀を通して歩んだ道程を一部反復していると見ることも可能です。
富裕層や中間層の拡大など所得水準の向上が見られたり、寿命が長くなったり、コミュニケーションが便利になったり。様々な格差が指摘されはするものの、新興・途上国の生活水準が向上する傾向にあるのは確かです。
新興・途上国における大きな変化の1つとして挙げられるのは、先進国で産業革命以降に一気に都市化が進んだのと同じように、農村から都市部への急激な人口流入が進んでいることでしょう。下のグラフのように、新興・途上国の都市人口は2010年の26億人から2020年には32.7億人に達すると予測されています("World Urbanization Prospects 2011"より)。
開発途上国全体の都市人口の増加率は2010年から2020年の10年間で25.7%となっていますが、後進開発途上国のみに絞ると44.6%の増加率という急激な都市化傾向が明らかになります。グラフをもうすこし詳細に見てみると、新興国を含む開発途上国全体では都市化の勢いは2020年以降すこし弱まりますが、後発開発途上国のみで見た場合、2020年以降にさらに勢いが増す予測となっていることもわかります。2050年には先進国の都市人口とほぼ変わらない数の人々が現在の後発開発途上国の都市に溢れることになるのです。
この急激な都市化は、先進国がかつて通ったのと同じように、都市部での失業者の増大、スラム化、交通渋滞、産業汚染や犯罪の増加など、新しい解決策を必要とする問題を次々に生じさせています。
1880年から1920年にかけてのアメリカの都市化にともなう問題が救世軍やライオンズクラブ、PTAやYWCAなど、いまもアメリカに根付いた多くの市民活動組織を生み出しましたが、それと同じように現在、ブラジルやインド、インドネシアなどの新興国では膨大な中産階級が都市に生まれるにつれ、社会企業の気運が高まっています。
ただ、過去とは明らかに異なるのは、グローバル化によって相互依存性が強まった今日では、急激な都市化にともなう様々な問題を単純にそれぞれの都市におけるローカルな問題として済ませることができなくなっているということでしょう。環境への脅威や経済危機、グローバル・テロや伝染病などがあっという間に全世界を覆ってしまうほど、世界全体が相互につながった現状では、ある都市で起きた問題が世界規模の問題を引き起こす引き金になりかねません。
前回も紹介しましたが、『社会起業家になりたいと思ったら読む本』の著者であるデービッド・ボーンステインとスーザン・デイヴィスは、こうした社会環境における社会課題の解決は、特定の起業家や組織の枠を超え、あらゆる人がチェンジメーカーとして動けるような相互作用や場の力を重視し、それぞれの立場から変革に関与できることが大切であるとしています。
もはや遠い国で起きている問題を対岸の火事としてやり過ごすことができない、1つの大きなシステムに巻き込まれた現実を生きて私たちはそれぞれがチェンジメーカーとしてこれからの時代を自ら築いていく活動をはじめる必要があるのです。