企業が持続的に成長するためには、新規事業を起こすことも必要ですが、既存事業のなかから成長性の高いものを見つけて、重点的に資源を配分していくことがたいへん重要です。今回は、企業内の複数の事業に関して、過去の売上高の推移データから成長性を分析し、どの事業が今後成長を見込めるのかを検討していきます。成長性の分析には、移動平均、CAGR、ファンチャートの3つの方法を使用します。
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移動平均で分析する
以下の表とグラフは、ある企業の全社売上の推移データです。

2009年を境に売上が下降線をたどっており、事業の見直しが必要な状況です。新規事業も検討されていますが、それには多大な投資が必要であり、かつリスクも高いため、簡単には決断できません。そのため、今ある事業の成長性を分析し、成長性の高い事業への集中的な投資を優先することになりました。 事業別の成長性分析のために用意されたデータが以下の表になります。

この企業では、事業が業種別に行われています。試しに各事業部の売上高を単純に折れ線グラフにしてみましたが、今一つ傾向がつかめません。そこで、まずは移動平均を利用して、このデータを分析してみましょう。移動平均は、以前の連載「統計関数編」でも紹介しましたが、時系列でのデータの変化を平滑化し、傾向を読み取ることに適しています。
移動平均を計算するために、以下のようなテーブル(セル範囲A12からG17)を用意します。

ここでは、3か年移動平均を計算します。



計算された移動平均の値をグラフで表示します。







元データから作成した折れ線グラフに比べて、はるかに傾向がよくわかります。このグラフから、2009年(の3か年移動平均)以降で売上が増加傾向にあるのが、「金融」、「製造」、「流通」の3事業部、減少傾向にあるのが「サービス」、「官公庁」の2事業部で、「通信」事業部はどちらともいえないという結果が読み取れます。
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平井 明夫(ヒライ アキオ)
株式会社エムキューブ・プラスハート 事業企画コンサルタントDEC、コグノス、オラクル、IAFコンサルティングにおいて20年以上にわたり、ソフトウエア製品やITサービスのマーケティング、事業企画・運営に携わる。現在は、事業企画コンサルタントとしてIT企業の新規事業立上げ、事業再編を支援するかたわら、デ...
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