HADBは「馬車の馬を増やす」のではなく「自動車に置き換えた」
「確かに、HiRDBのエンジンをたくさん並べて、ハードウェアを最適化することでビッグデータを高速処理するというアプローチも、考えられなくはなかったんです」(山口さん)
そうですよね。むしろ、そっちの方が定番のような気が。
「でも、われわれは誰もがもうあきらめていたもう1つのアプローチ、つまりDBエンジンを一から見直して、高速化することによるビッグデータの高速処理にチャレンジしたんです。その結果出来上がったのが、HADBなのです」
ふーん……でも、使う側からしてみれば、エンジンが新しかろうが古かろうが、結果的に速く動いてくれればそれでいいような気も。
「HADBが画期的なのは、エンジン自体の処理速度を飛躍的に向上させたことで、1台のサーバだけですべてを処理できるようになった点です。データベースサーバをずらりと並べる必要はまったくありません。サーバは1台だけ。シンプルだから運用コストも大きく低減できるんです」
ああ、なるほど。サーバが一台だけなら管理ポイントも一箇所で済み、運用も楽になると。
「馬車と自動車のたとえで説明すると、分かりやすいかもしれません。かつては、馬車のスピードを上げたり荷物の積載量を増やすには、つなぐ馬の頭数を増やすしかありませんでした。これが、既存のデータベースをたくさん並べていく方式だとすると、HADBは馬を思い切って自動車に置き換えたわけです」
なるほど。
「それに、馬の数が増えると、糞の始末も大変になるでしょ? つまり、運用が大変になるということ(笑)」
……分かりやすいたとえ、ありがとうございます。あ、でもでも、そんなに速いんだったら、逆にそれを基幹系で使えば、定型業務がサクサク終わって「ひゃっほう!」となるのでは? と今度は、石川さんの眼鏡がキラリンと光を放つ。
「HADBは情報系の用途に特化していますから、HiRDBほどの可用性は備えていません。そこはもう、ターゲットの用途が根本的に異なるので、割り切ってるんです。可用性と、性能は、トレードオフな部分がありますからね。可用性を殺して、性能を取るか、逆に性能を殺してでも、可用性を追求するのか。両者を両立して、そこそこ使えるものを作るより、どうせならどっちかに割り切って、尖ったデータベースを作った方が、使う側もわかりやすい。それになにより、潔くてかっこいいじゃないですか!」
そうですね、浅はかでした、スイマセン……。やっぱり基幹系と情報系では、求められる要件が根本的に異なるわけですね。今回はあらためて、いろいろと勉強させてもらいました、はい。
ちなみに、「HADBの高速処理の秘訣について知りたい!」というもの好きな方は、本連載の第3回のほか、以下の記事でもHADBについていろんな角度から紹介しているので、ぜひ参照されたい。
さて次回は、これまで開発してきた様々なデータベースを支えている日立のサポートについて取り上げたいと思う。日立の特長でもよく言われる「国産ならではの品質の高さ」って一体なんなのだろうか?目に見えないからこそよくわかっていないところだ。
ということで、国産ならではの品質の意味するところ、そして、その国産品質を維持するためにどのような活動をしているのか?という部分にについて具体的にうかがってみたい。