「政府の取組み」や「被災地支援」でも活用され始めたサービスデザイン
(Service Design Network Japan Conference 2013 レポート:前編)
5月11日、日本で初の「サービスデザイン」をテーマにしたカンファレンスが開催された。同分野に関心を持ち、またその実践や研究教育に取り組んでいる様々さまざまな関係者が集まり、今後のサービスデザインについて考える場となった。そもそもサービスデザインとは何か。その概念や手法、今後のビジネスの新たな課題発見やイノベーションの可能性を、前後編に分けてレポートする。
テクノロジーやサービスをも融合させた「プロダクトサービス・システム」
日本では初の開催となったService Design Network Japan Conference2013。
「サービスデザイン」とは、単に製品のデザインにおけるサービスという狭い範囲のものではなく、製品やサービスの違いを超えてさまざまなリソースをつなぎあわせ、顧客の価値創出を支援していき、事業の収益を図る方法論を指す。
こうした考えのもとに、最新の事例や研究を共有する世界的なService Design Network(SDN)の日本支部が誕生した。本カンファレンスでは、SDN代表のビルギット・マーガー氏の招待演説や各企業の事例報告などがおこなわれた。以下、ビルギット・マーガー氏の講演内容を紹介していく。

「電球は私たちのライフスタイルに変化をもたらし、24時間働けるようになった。まさに、テクノロジーとプロダクトのパラダイムシフトを起こした1つの事例。これまでの歴史を振り返ると、人類は生活や製品を改善するために多くの力を注ぎ、さらに製造手段やテクノロジーを駆使し、ユーザーが使いやすくするための研究を実践してきた」と、マーガー氏はテクノロジーの進化から話を始めた。
あるイギリスの調査によると、製造業系の企業では、従業員一人あたり平均して約3270ユーロ(約40万円/年)をデザインの研究開発費に充てているという。製造業系の企業の41%はデザインを最優先と認識し、デザインへの投資によって株式市場で2倍の成績をあげている企業もある。
製造業がこれだけの投資をしている中、「サービス業もそれだけの投資をすべきなのでは?」と疑問を参加者に投げかけた。
マーガー氏は「製品があるだけで配送も設置もメンテナンスもされず、発電や経理計算もする人もいない中身のないサービスだったら、どう感じるだろうか」とし、製品としての価値とは何かを考えるべきだと語った。
つまり、テクノロジーも含めてあらゆるものを融合させて製品の価値を高めていくことがサービスであり、その一連の過程のことが「プロダクトサービス・システム」なのだという。
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江口 晋太朗(エグチ シンタロウ)
TOKYObeta。編集者。これからの未来のための情報設計や環境デザインを実践する編集者。スタートアップやテクノロジー、デザインやカルチャーの分野のコンセプトワークやメディアづくり、企画設計などで企業の事業支援を行う。Twitter@eshintaro
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