「キャリア・クラウド」の持つ強みと注意点
それでは、キャリア・クラウドの強みは何で、ユーザーはプロバイダーを選ぶ際に何を見ておけばよいのか。田崎氏は、クラウドのサービスを「ネットワーク」「データセンター」「ホスティング」「標準サービス(IaaS)」「マネージドサービス」の5つに分けた上で、クラウドを利用する際には、大きく3つの注目ポイントがあるとアドバイスした。
まず、注目しておきたいのは、クラウドへのネットワーク接続コストだ。「料金体系はさまざまだが、部分的にAmazon Web Servicesに対し、価格競争力を有する場合もある。移転コストなどもふまえ、どのくらいのメリットがでるかを検討しておきたい」(田崎氏)
2つめは、WANや複合環境もカバーするようなセルフサービスポータルの提供だ。これは、5つのサービスのうちの、データセンター、ホスティング、標準サービス(IaaS)などのサービスに関わるもので、データセンターの移行などを行う際に、複合的な環境を統合して管理できるかどうかがポイントになるという。
3つめのポイントは、マネージドサービスを付加価値として展開しているかどうかだ。マネージドサービスは、アウトソーシングサービスとは違って、標準化されメニュー化されていること。たとえば、監視やバックアップなどがコンポーネント化して提供されていることなどだ。「標準サービス(IaaS)として標準化されていたとしても、マネージドサービスの標準化が進んでいないと、実際に運用などを行う際にしわ寄せがくる。プロバイダーによって差が出てくるところなので、よく見ていく必要がある」(田崎氏)とした。
その上で、田崎氏は、国内のキャリア・クラウドの例として、NTT Com、KDDI、IIJのケースを取り上げて、具体的に特徴を紹介した。NTT Comについては、概況として「資金力、技術力を集中し、グローバル展開に取り組んでいるが、グループ内での整合は今後のチャレンジ」という状況だという。強みは、国内外に広がる広域クラウドの提供、コロケーションからパブリックまでの複合的な構成への対応、セルフサービスポータルの充実などだ。
また、KDDIについては、「テクノロジーにおいてパートナー頼みの面があり、サービスの充実や自社所有インフラとのシナジー強化にはさらなる努力が必要」な状況で、強みは、仮想プライベート/プライベート領域に注力していること、ネットワークサービスをバンドルし、広域化、冗長化していることなどだという。
注意点としては、発展途上のクラウド市場でキャリアのポジションが変化しやすいことも指摘し、ユーザー企業は、ユニークなポジションを維持できているかを継続的に把握する必要があることにも注意をうながした。
田崎氏は、最後に「大切なことは、キャリアにかぎらず、プレーヤーの特性を理解し、クラウド市場との親和性や、従来環境からの移行に向けた戦略や取り組みを把握し評価すること。特に、各プレーヤーのビジョン、サービス、テクノロジーへの投資姿勢も評価の基準に加えること」と提言し、講演を締めくくった。