スタンフォード式「創造力の教え方」
この本では、スタンフォードd.schoolのプログラムで実践されてきた「創造力を発揮する方法論」を凝縮したプログラムの内容やそれによる受講生の変化の物語が紹介されています。
その根本にある信念は、「創造力は、誰もがもっている想像力をカタチにする力」。それを阻害するのは、「自分に創造力があると周りに言ったり、自分自身で認めたりすることに対する『恐れの気持ち』」だといいます。
その『恐れ』をなくすために、ちょっとした道具や知恵を使って、小さな成功を計画的に積み重ねることで、誰でも、その人その人なりに持っている想像力をカタチにして、自分の周りの世界を少し良いものに変えていく、創造力をもっています。
創造力への恐れを取り除くための方法論は、この本では「道筋をつけられた熟練(GUIDED MASTERY)」という名前で紹介されています。スタンフォードd.schoolで用いられている方法論のエッセンスには、蛇への恐怖症をたった4時間で取り除く研究をしていた心理学社のロバート・バンドゥラの研究が反映されていると言います。蛇が嫌いな人に、隣の部屋にいる蛇に触れさせるための方法論です。簡単に言うと、いきなり蛇を苦手な人に、蛇を触らせるのは難しくても、まずは、マジックミラー越しに、次は、ドアの入り口から、次は革手袋をつけて、とだんだん距離を縮めていけばついには蛇に触り、最終的には、好きになることすら出来るというのです。
皆さんは子供の頃自転車に乗る時、まずは、補助輪をつけて乗りますよね。補助輪を無くした時は、一番転びやすく自転車を嫌いになりやすいタイミングです。お父さんが、「転んでも大丈夫。バランス崩したら俺が絶対に支えてあげるから」というガイドをつけてあげると、恐怖心がとれて簡単に乗れるようになります。創造性の発揮をするうえで、いくつもの恐怖が待ち受けています。たとえば、「周りの人にどう思われるか心配だ」、「自分のイメージを人に伝えるのが下手なの」「アイデアはたくさん出せるけど結局うまくまとまらない」、などのように。
デザインスクールでは、このような「創造性を発揮するうえで生まれる恐怖心」を取り除くためのガイドや、ツールがついたプログラムが用意されています。
たとえばですが、以下は筆者が以前日本で参加した「右脳で描く」というワークショップで描いた自画像なのですが、5日間のワークショップで方法論を教わると自画像がこれだけ変化します。これは、「右脳で視て描く」ステップを一個一個経ていくことで、一番表現が難しいと思われている絵の表現ですら「教えることができる」ものなのです。そして、それは創造力においても全く同じことだと感じました。