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教育業界の破壊的イノベーションも「辺境」から―ユーザーの価値になる課題解決とは?

(第17回)イノベーションに効く翻訳書09:『教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に変革する 』 

 「教え方」を一人ひとりの「学び方」とを一致させることができれば、どれだけ教育は良くなるのだろう。このミスマッチを解決すべく『教育×破壊的イノベーション』はアメリカを舞台に想定された2008年に書かれた改革シナリオだ。MOOCs等、IT技術の発展により日本も改革への条件は整いつつある。出版から6年経った今、日本語で改めて読んでみよう。

世界最大の大学

 今回紹介するのは、『教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に変革する 』(クレイトン・クリステンセン著/翔泳社・刊)です。本書を通じて、教育業界における破壊的イノベーションを考えてみましょう。

 では、以下の問いを考えてみてください。

  • なぜグーグルは教育関連のRenaissance Learningに4000万ドルも投資するのか?
  • なぜMITやハーバードの超エリート大学は無料で講義を解放しているのか?
  • アダルトやエンターテインメント以外の動画コンテンツはビジネスになるのか?
  • 教育改革は何年も叫ばれているのになぜ進まないのか?
  • 詰め込み→ゆとり→脱ゆとりの流れはうまく行くのか?
  • 子供たちの世代によりよい教育を提供していくためにはどうしたらよいのか?
教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に変革する
『教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に変革する』

 これらの一見関連のない問いは実はつながっています。それぞれの現象の深層にある構造を捉え、未来に対応するだけでなく、さらにはより良い社会を創造することができるのかを考えていきたいと思います。

 学生が400万人以上いて、誰もが入学し、講義を受けることができる大学。こんな大学がアメリカにあります。(注1)

 しかも、設立されて2年も経っておらず、最新のIT設備が整っているうえに、シリコンバレーを創ったとも言えるスタンフォード大学の授業が受け放題。こんな大学に子供を入学させてみたくはないでしょうか?

 既にお気づきの方もいるかもしれませんが、この大学はインターネットを使って学べるコーセラ(Coursera)というMOOCs (Massive Open Online Courses)、いわばオンライン大学です。コーセラはスタンフォード大学の教授たちが設立した企業で、受講者はスタンフォードに限らず、プリンストンやミシガン大学の授業をMOOCs経由で自由に受けることができます。コーセラ以外にもエデックス(edX)やユーダシティ(Udacity)などを合わせると600万人以上がこうしたMOOCsで教育を受けていることになります。受講生は年率10%で成長しており、2000年の45000人から現在100倍以上もの人がこの新しいムーブメントに参加しています。(注2)

 国内勢としては、東京大学や京都大学もエデックスに参画し、他にも国内中心にJMOOC(日本オープンオンライン教育推進協議会)が設立され、今春から初のサイトgacco.orgが開設されます。大学側も本格的に発展すると考えているようです。いずれMOOCsによって従来型の教室がなくなると考えているアメリカの大学経営関係者は全体の33%にも上るという調査結果もあります。

一方向の講義を遠隔地で受けても効果はあるのか?

 これは外国だけで起きている事象なのでしょうか?そもそも、教授から何百何千キロも離れた土地から画面を通して受けられる教育の価値はどれほどなのでしょうか?

 「いつでもどこでも参加できる」いうメリットはあるものの、クラスルームという双方向の「」やクラスメイトという「仲間」がいないと効果的な学習ができそうにありません。実際、一旦受講したものの、コースを修了するまで学習を続けた学生は全体の10%程度に過ぎません。Massiveというように、コース数は大量に提供されている一方で質の面ではまだまだ不十分と言わざるを得ません。

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破壊的イノベーションが予測する「教育の未来」

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この記事の著者

津田 真吾(ツダ シンゴ)

日本アイ・ビー・エム、日立グローバルストレージテクノロジーズ、iTiDコンサルティングを経て、イノベーションコンサルティングおよびハンズオン事業開発支援に特化したINDEE Japanを設立。HDDの開発エンジニア時代に「イノベーションのジレンマ」に触れ、イノベーションの道を歩み続けることを決意する。その著...

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