日本の大企業は、眠っている資産を活用せよ
「イノベーションへの投資:ベンチャーキャピタルとアントレプレナーシップ」と題して開催された本セッションでは、モデレーターの岩瀬大輔氏と3人の著名なベンチャーキャピタリスト(VC)が登壇した。
デビッド・リー氏がSV Angelを創業したのは2009年。これまでTwitterやPinterest、Square、Dropboxなど、コンシューマーインターネットを中心に投資してきた。リー氏は「今後の10年は、過去20年よりも驚異的な変革が起きる」と見ている、彼がVCを志したきっかけは、発明家で起業家だった父親の影響が大きい。
田中章雄氏は元々起業家だったが、創業したソフトウェア会社を買収したマクロメディア(現在はadobeに吸収)のコーポレートVCとしてキャリアをスタート。現在、共同代表となっているインフィニティ・ベンチャーズは、アジアではアーリーステージ、つまりシード(種)の段階で投資している。
中国版エンジェルリスト36KRに登録されているスタートアップの数は1万7千以上だが、そのうち7千はこの1年で追加された。また次々と事業を立ち上げるシリアルアントレプレナーの比率が高く、エンジェルのデータベースには700人以上が登録されている。女性のVCも多い。
ジョージ・ケラマン氏が属する500 Startupsは、過去4年で700社以上に投資(日本では10社)。ケラマン氏は、あるカップルが裏庭で見つけた150年前の金貨が10億円相当だったというエピソードを引き合いに、日本企業が150兆円もの現金を埋蔵させたままにしていることを指摘した。その0.1%、1500億円を今年度、起業支援に投資しよう、というのが氏の提言だ。さらにケラマン氏は「日本企業は、女性も埋めたまま活用していない」と苦言を呈す。
大企業もかつてはスタートアップだった。リー氏は「アメリカの大企業は、テクノロジー企業のライフサイクルに、大きな役割を果たしてきた」と振り返る。一番有名な事例は、Googleがまだ創業期だった頃、Yahoo!がワラントを、販売提携という形で取得したというものだ。
一方、日本の大企業は、起業のサポートにポテンシャルを最大限に発揮してきたとは言い難い。居心地がいいため、イノベーションに対する十分なインセンティブが無いからだ。
中国でエコシステムが回り始めたのはごく最近で、3、4年前に大きな変化があった。以前は「面白いアイデアがあれば、それを自分たちでコピーすればいい」、という考え方だったのが、バイドゥ、アリババ、テンセンといった大手Tech企業がスタートアップに投資するようになっている。