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オンプレミスのデータベースを移行する際に気をつけることは?
谷川:今までの話、オンプレミスからクラウドへは、IaaSに移行するならさほど問題はない。レスポンス面も心配ないですよね。
柳下:いやいや、まったく問題がないわけではなくて…。
谷川:ほう。
笹木:ストレージです。ディスクI/Oが足りなくなることがあります。今、企業が使っているたいていのシステムであれば、問題なくクラウドには移行できます。しかし、本当にシビアなレスポンスが要求されるシステムの場合には、ディスクI/Oが足りなくなることがあります。CPUやメモリ同様に、データベースは料金と性能が選べます。しかし、Azureのストレージにはまだ選択肢がありません。そういう場合には、問題ないとは言えないんですよ。
谷川:サポート担当らしい、誠実なお答えですね。まだ、ということは?
笹木:こうご期待。現時点では選択肢がなくて。
柳下:一時のAWSもそうでしたね。
笹木:そうなんです。Amazon EBSだと既定では100 IOPSくらいしか出ません。AWSもそのままだとパフォーマンスが充分ではない可能性が高いです。ただいろいろとノウハウがあったり、お金を出せば性能を向上させられる仕組みがあったりでトラブルを回避できているようです。
AzureにはWindows Azureストレージというデータ格納サービスがあり、現時点で1ディスクあたり 500 IOPS出ます。でも、大規模システムではこれでも不十分。これを現時点では最大16ディスクまでスケールアウトして8000 IOPS。かなりのものだとは思うのですが、シビアな基幹系やそれなりのレスポンスを求めるお客様には、これでは足りないこともあります。
谷川:SQL Server 2014のインメモリの機能なんかが出てきたら、そのあたりは改善されるんですか?
笹木:インメモリOLTPや列ストアインデックの機能を使うことでディスクIOを減らして一部改善できるかもしれませんが、SQL Server 2014の機能だけで全てを解決するのは、まだ難しいかと…。
柳下:たとえばJRの料金計算みたいな、たくさん演算するシステムをAzureやクラウドでやるのはまだ無理だと思います。それはAWSにしても、かなりの投資をしないと。
谷川:そこまで投資するなら、買った方がいいと。そのへんの目安はあるのかな?
笹木:海外の文献だと、AWSの月額利用料金が500万円を超えるとオンプレを検討するという記事もありましたね(※)。
※ http://gigaom.com/2013/10/10/amazon-web-services-should-you-stay-or-should-you-go/
佐藤:Azureでもベーシックなインスタンス・タイプに加えて、ハイメモリやハイCPUのタイプも出てきて、ディスクI/Oについても今後改善していく予定です。今は厳しくても、数年後には対応できるはずです。
谷川:パフォーマンスは見極めなくてはいけないポイントで、現時点でクラウドには限界値もあると。それにしてもさっき柳下さんが言っていた、オンプレミスより「SQLデータベース」が速かったというのは、すごく面白いですね。裏で頑張って動いているものがあるんですか?
佐藤:特になにも動いてないですね(笑)。
柳下:試験のシナリオが悪かったのかな。
高山:SQL Serverにも特になにもしてないですよね。
柳下:してないです。MTをSQL Serverで使っているお客様のほとんどは、SQL Serverのチューニングなんてしません。ほとんどのケースはSIerさんがSQL Serverをインストールやセットアップしてくれます。SIerさんからするとどういう風に使われるか分からないから、チューニングなんてしません。
谷川:無駄な労力は払わない。
柳下:チューニングすれば違いが出ると分かっていても、MTに限っては通常はそういう人たちが対象ではないので、素のままで評価することになります。
高山:何もチューニングせずに無事に動いているなら、それはそれでいいですよね(笑)。
柳下:大した機能を使ってないから。
笹木:SQL Serverはウィザードでインストールできてしまいますからね。
柳下:面白い話があって、SQL Serverだと文字化けはありませんが他社データベース製品で文字化けする。それで相談されたら「OSのWindowsと同じMSのSQL Serverにしてください」と答えます。そうしないと、ぼくたちのサポートコストが上がるばかり。毎回お客様と同じ環境を作るなんて、一介のソフトウェア会社にとってどれだけ大変なことか。
谷川:それなら、お客様にはクラウドに行ってもらったほうがベンダーとしては楽だと。
柳下:ぜんぜん、楽ですよ。意地でもクラウドに持っていきたいくらい。
シックス・アパートのようにソフトウェアのビジネスをしているところが、どんどんクラウドを指向するのは、収益のモデルが変わるのもありますが、それ以上に隠れたサポートコストを抑えられるのがすごく大きいと思います。MTは既に5万を超える企業に採用されています。ということは5万通りの使い方をされているといってよいでしょう。すべてのパターンをサポートするのは無理ですよね。
佐藤:ISVさんがSaaSやAzureを選択するのは、稼働環境のバリエーションを減らすところにも大きなメリットがあると思いますね。
(後編へつづく)
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