SMACS領域を“クロス”させたIBMの戦略 -- IBMソフトウェアの総力を結集「IBM Software XCITE Spring 2014」初開催
IBMソフトウェアの総合イベント「IBM Software XCITE Spring 2014」が、5月21~22日、グランドプリンスホテル新高輪で開催される。イベントのテーマは「クラウド、ビッグデータ、新しいエンゲージメントで加速する、成長とイノベーション」。クラウド、ビッグデータ、新しいエンゲージメントを活用することで、企業がどう成長し、イノベーションを推進していくことができるのかを提案する本年の日本IBM最大級のイベントだ。
SMACS領域に見るIBMの戦略とは
IBMソフトウェア事業が「SMACS」に注力している。SMACSとは、Social Business、Mobile First、Analytics/Big Data、Cloud、Securityの頭文字をとったものだ。これらは多くのベンダーが対応を表明しているが、「IBMらしい」のは、包括的、網羅的に新しいプラットフォームのソリューションを提供していることだろう。
「IBMらしさ」を特に実感できるのは、SMACS領域が組み合わさった場合だ。実際にどんな組み合わせがあるのかを考えると、さまざまな興味がわいてくる。たとえば、ビッグデータとアナリティクスの基盤であるWatsonは、ソーシャルやモバイル領域で今後どう活用されていくのか、IBMが展開してきた製品やソリューションはクラウドにおいてどう展開されるのか、M2Mやモノのインターネット(IoT)への対応はどうなっているのか、さらには、SMACSは自社のビジネスにどんなメリットをもたらすのか、などだ。
そうした興味にこたえるように開催されるのが「IBM Software XCITE Spring 2014」だ。これまでIBMでは、5大イベントと呼ばれる「Connect」「PULSE」「Impact」「Innovate」「IODC」において、ソーシャル、モバイル、ビッグデータ、クラウドといったテーマごとにIBMのソリューションを紹介してきた。だが、企業が近年のITトレンドやビジネストレンドに対応するうえでは、これらのテクノロジーを組み合わせて、ビジネスを考えていくことが欠かせない。
なお、直前の4月27日から5月1日までの日程で、米国ラスベガスおいて「Impact 2014」が開催される。最近のIBMのイベントでは、クラウドに関する多くの発表がImpactで行われており、その発表内容が日本のXCITEでお披露目されることに大いに期待したいところだ。

XCITEは、SMACSの各領域を互いにクロスさせ、その組み合わせによってビジネス価値を引き出し、企業活動をエキサイトなものにする狙いを持ったイベントだ。「すべてのシステムが有機的に連携し、密接に統合されることがIBMソフトウェア ソリューションの最大の差別化要因であり、その全貌を包括的に理解できることが本イベントの最大の利点」(日本IBM)なのだ。
各テクノロジーを“クロス”させ、価値を引き出す
では、XCITEでは、具体的にどんなソリューションが紹介されるのか。ここでは、アナリティクス、クラウド、セキュリティというテーマに注目したい。
アナリティクスに注目する理由は、Watsonの存在がある。PureDataやDB2、InfoSphere BigInsightsなど、IBMはビッグデータ関連の製品やソリューションを数多く展開する。それだけでも直近のビジネスには十分貢献するはずだが、今後、より「IBMらしさ」を発揮していくうえでは、Watsonが実現する「コグニティブ・コンピューティング(Cognitive Computing)」がキーになると考えるからだ。実際、ソフトウェア事業本部長のヴィヴェック・マハジャン氏は、Watsonを次のように説明している。
「Watsonは特別なサービス。Watsonを利用することで何が良くなるのか、それを徹底的に分析して進めている。すでに顧客は、インフラ基盤として提供するWatson Foundationsを使うことができる。ビッグデータの次のステップとして、コグニティブ・コンピューティングを考えている人に提供する」
また、クラウドについては、PureSystemとSoftLayerを使ったハイブリッドクラウドサービスや、PaaS基盤Cloud Foundryを活用したクラウドアーキテクチャIBM Bluemix、ビジネスブロセスをクラウド化したBPaaSなどに注目したい。
ハイブリッドクラウドについては、買収したSoftLayerのテノクロジーとこれまでのPureAppication Systemのテクノロジーがどう統合されていくのかが気になるところだ。また、BlueMixについては、JavaやRuby、Node.jsといったCloud Foundryで利用されるテクノロジーを使って、IBMがどんなオープン・クラウドを構築していくのかが注目される。その際、クラウド上のソフトウェア開発ライフサイクル管理ツールJazzHubがどんな役割を果たすのかも気になるところだ。
マハジャン氏はクラウドについて「PaaSは、日本企業が最も関心を持っている分野。IBMにとっては、競合他社と最も差別化できるポイントだ」と話す。
差別化ポイントという意味では、セキュテリィもそうだ。それは、他社がSMACという呼び方をするなか、日本IBMでは最後にセキュリティのSをつけていることからもわかる。ソーシャルやモバイル、ビッグデータ、クラウドをサービスとして提供する際には、いまやセキュリティは欠かせない要素になっている。
IBMでは、セキュリティ研究機関IBM X-Forceや、セキュリティ監視サービス拠点IBM SOCを中心として、SMACS領域のすべてにわたって、セキュリティサービスを提供することができる体制を整えている。脅威イベント解析製品IBM Security QRadarを顧客環境に設置し、インシデントレスポンス対応を含めたマネージドサービスを提供するIBM Managed SIEMなどは、その典型だろう。Webやエンドポイントセキュリティの「Trusteer」を統合するなど、SMACS領域のセキュリティ強化は継続的に続けられている。
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齋藤公二(サイトウコウジ)
インサイト合同会社「月刊Computerwold」「CIO Magazine」(IDGジャパン)の記者、編集者などを経て、2011年11月インサイト合同会社設立。エンタープライズITを中心とした記事の執筆、編集のほか、OSSを利用した企業Webサイト、サービスサイトの制作を担当する。
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