前半のセッションでは、takram design engineering ディレクターの渡邉康太郎氏、特許庁総務部国際協力課意匠政策班班長課長補佐の外山雅暁氏、HCD-Net理事で千葉工業大学准教授の安藤昌也氏、モデレーターにHCD-Net理事でキヤノン研究員の松原幸行氏が登壇した。
与えられた問いを再定義し、ストーリーを導き出すこと
渡邉氏は、ドイツのカッセルで5年おきに行われるdOCUMENTAというアートイベントにて、100年後の荒廃した地球での生活というテーマを与えられた。そのテーマに沿い「100年後の水筒」のあり方を提案するというプロジェクトについて語った。
“ 100年後の社会は、現代の常識からは想像しづらい。既に存在している「水筒」というものから一度離れ、人が生きていく上で必要な水分摂取そのものをいかに減らすことができるか、と問題を捉え直し、最終的に人工臓器のプロダクト群を発想しました ”
与えられたテーマをもとに、プロダクトそのものではなく人とものとの究極的な関係性に立ち戻ることで、与えられている問い自体を再定義し、発展的な答えを導くことが可能になるという。また、少し未来の和菓子をデザインするという実際に渡邉氏が関わったプロジェクトでは、和菓子を日常的に食す機能食品として再定義し、朝起きてから夜寝るまでに、その時間帯に摂取するべき栄養を含んだ5種類の和菓子のセットを作った。それぞれが時間帯の陽の光にマッチしたデザインとストーリーを持つ「ひとひ」というプロダクトに仕上げた。
“ ものづくりとものがたりを相互作用させ、試作を通してコンセプトをも練り直し続けるプロセスを、私たちはStoryweaving ® と呼んでいます ”
takramは、プロジェクトごとにワークショップなどの新しいメソッドを多くつくりだしているという。大事なのは、メソッドを作り使ってみるだけでなく、過去のメソッドを敢えて壊し、常に進化をつづけることだと語る。
“ 創造と破壊、デザインとエンジニアリング、ものづくりとものがたり、全体と部分、手段と目的…。ものごとに相対するとき、二つの対極の間を振り子のように往復することで、新たな気づきを得られる ”