内部監査人が支援する適切な経営・業務管理
内部統制の盛り上がりと相まって注目を浴びている内部監査だが、その実態について島田氏は「関心の高さほど内部監査が正確には理解されていない」と苦笑いする。「特に『検査』と勘違いしている方が、まだまだ多いようですね。検査はあくまで伝票が合っているか、完成したものに間違いはないかという「事実や結果」をチェックすること。一方、内部監査は、会社の仕組みやプロセスが適切に機能しているかどうか「マネジメントシステムやプロセス」をチェックすることです」
また、内部監査が「監査役」や「監査委員会」とも混同されることがあるという。「内部監査人」がチェックするのは、あくまで業務レベルの範囲。「監査役」や「監査委員会」のように、経営層の経営判断の是非にまで立ち入る立場ではない。しかし、経営者が適切な判断ができるように、リスクを含めた情報の精度を高めていくという重要な役割を担う。つまり、「内部監査人」が経営者に伝える情報についての適切さをチェックしてはじめて、「監査役」や「監査委員会」による経営者の経営判断の妥当性をチェックできるというわけだ。
米国のような「監査委員会」設置会社の場合、内部監査人は、管理や執行の適切さに関する事項は社長に、そして経営上の問題に関わる事項については監査委員会に伝えるという情報の流れ方をとることになる。また、わが国の場合には、監査役との情報交換を密にとっている企業が少なくない。いずれの組織体制においても、内部監査人は社内の内部統制の状況を公平に評価し、経営者に適切な情報を提供することが重要となる。
たとえば、「内部監査人」が存在しない組織というものを想像してみよう。経営層は、各部門から報告される範囲内でしか各部門の活動状況を把握できない。問題が表出したときにはじめて事態を把握でき、そのときには「時すでに遅し」ということもあるだろう。
「内部監査人がいるのといないのとでは、会計監査人監査での負担がまるで違いますね。会計監査人との窓口になったり、財務・経理部門をバックアップしたり、かかわり方はそれぞれの会社で異なりますが、手間や時間はもちろん、コストの面でも大きく異なってきます」と島田氏も指摘する。