
BtoBの世界におけるSFAとマーケティング・オートメーションの違いは、前者が案件ベースで情報を管理するのに対し、後者は個々の顧客が何を調べ、何に興味を持っているかという個人レベルで情報を管理、活用するところにある。マーケティング・オートメーションでは「顧客企業のCEOのAさんは何を調べにWebページを訪れたのか」「CIOのBさんはどんな技術資料をいつダウンロードしたか」といった個人の行動情報を蓄積、分析し、予測して次なるアクションを促す。マーケティング・オートメーションで得られた結果を案件に結び付け売り上げを向上させるには、情報が人単位か案件単位かの違いを吸収し双方の仕組みをうまく連携させる必要がある。
デジタルマーケティングの領域だけを効率化してもダメ
BtoB企業でSFAやCRMを活用していれば、統合化されているか否かに関わらず顧客データベースは存在する。この顧客データベースの情報は企業や案件の単位で格納されているのが普通だ。もちろんそこには担当者という個人の情報もあり、それをマーケティング・オートメーションのツールなりにインポートして利用することになる。
ここ最近デジタルマーケティング領域に力を入れているOracleは、SFAやCRMのアプリケーションももちろん提供している。Oracleによれば現状でマーケティング・オートメーションツールのEloquaなどとCRMやSFAのシステムをトータルで提案して欲しいとの顧客要求はまだまだ少ない。しかし、たとえば企業内にある電話問い合わせの情報などをEloquaに取り込んで活用したいといった事例はある。海外ではそういった取り組みで効果を上げている企業も多いとか。逆にコールセンター事業を展開しているような企業では、マーケティング・オートメーションを新たに導入し、そこからえら得られる情報をコールセンターの業務でも活用する動きが出ている。
コールセンターの電話など顧客との接点を適切に管理する。これは、Oracleが買収し手に入れたRightNowが得意とするところだ。マーケティング関連製品が加わる以前は、このRightNowを中心に「カスタマー・エクスペリエンスを最適化する」というメッセージをOracleは強く押し出していた。
製品購入前の問い合わせ窓口、購入後のサポート窓口、さらには営業窓口など企業にはさまざまな顧客との接点をがある。多くの場合、それぞれの接点で管理されている顧客情報はバラバラだ。製品購入前にどのような問い合わせをしていたのか、その結果どんな製品を購入したのかをタイムリーにサポート部門が把握している企業は少ない。情報にはタイムラグがあり、共有もうまくいっていない。そういった状況を解消するのがRightNowだ。
しかし、製品などを購入する前の「見込み顧客の情報」は、RightNowでも管理しきれない。そこにマーケティング・オートメーションの仕組みが加われば、見込み顧客の情報と既存顧客の情報を連携できる。これにより顧客との関わりのライフサイクル全体でのカスタマー・エクスペリエンスの最適化が実現できることに。この途切れのないカスタマー・エクスペリエンスこそが、Oracle本来目指すところであり強みでもある。
先日行われたOracle Digital Marketingの発表会の際に、Oracle Marketing Cloud全体の事業を統括するシニア・バイスプレジデント ケビン・エイクロイド氏は、包括的なスタックソリューションを持つアドビシステムズ、セールスフォース・ドットコム、IBMという3社をライバル企業の名前として挙げた。IBMやアドビシステムズはマーケティング・オートメーションの部分は包括的に揃えているが、SFAやCRMは持っていない。もちろん、RightNowのような仕組みもない。

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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