消費者との接点がデジタル化
「ここ最近、バックエンドよりもフロントエンド側にIT投資が移っています。IT部門はマーケティング部門との強力な関係性が求められています。今や、すべてがインターネットでつながる『ハイパーコネクティッド・コンシューマ』の時代です」と語るのは、SAS Institute Japan マーケティング本部 兼 ビジネス推進本部 本部長 北川裕康 執行役員だ。やはり、マーケティングの世界でも無視できないのがIoTの存在だ。
最初から周りがデジタルの世界だった「デジタルネイティブ」もいれば、デジタル時代以前に生まれ後からデジタルを身につけようとする「デジタルイミグラント」と呼ばれる消費者もいる。いずれにせよ、企業が彼らと接する部分の多くがデジタル化されている。ここがかつてとは大きく異なる部分でもある。
消費者との接点のデジタル化が進む中、企業はどのように顧客との関係性を作っていけばいいのか。
「デジタルの波を捉えながら、オムニチャネルでどうやっていくかが重要になります」(北川)。
新しい時代のマーケティングを企業が実践するには、まずはシンプルで一貫した顧客体験を提供できなければならない。また、マーケティング組織には説明責任が求められるようになった。これは、経験や勘ではなく、マーケティング施策のROIをきちんと説明しなければならないということだ。そして、顧客とのさまざまな接点において確実に価値を引き出すことも重要となってくるという。
インバウンドの問い合わせにタイムリーに価値を伝えられるか
SASがそんな新しい時代に適応するために提供するのが「SAS Customer Intelligence 6.4」だ。今回の新バージョンは、オムニチャネル・マーケティングプラットフォームとして強化がなされたとのこと。現状さまざまなマーケティング・オートメーションの仕組みが市場に提供されているが、今回のCustomer Intelligenceが拘っているのが顧客の接点をまたがって「顧客のシングルビュー」をきちんと作れるかどうかだ。キャンペーン管理などで、見込み顧客を集めナーチャリングするツールは多い。これももちろん大事だが、さまざまな顧客との接点においてインバウンド、アウトバンドの施策が正しく打てるかに重点を置いたものはまだ少ない。
特にインバウンド、たとえば購入前に問い合わせ窓口に商品について訊ねてくるような顧客は、購買の可能性はかなり高い。その際に、過去の購買履歴やWebページへのアクセス状況などをもとに、正しい情報提供ができるかはかなり重要だ。ソリューションコンサルティング第一本部 Customer Intelligenceグループ 部長の小笠原 英彦氏は「従来のオムニチャネルから脱却すべきです。真のオムニチャネルは、顧客をファン化していくようなものではありません。顧客との接点の情報を収集し、チャネルを横断したシナリオを書くのが真のオムニチャネルです」と語る。
システム側の要件としては、すべての顧客との接点を統合し一元管理できることがまず挙げられるだろう。これが実現して始めて、顧客に対する洞察を導き出す分析が意味を持つようになる。分析の結果を使って顧客のライフスタイルを把握し、インバウンド、アウトバウンドで適切な情報を提供する。
「インバウンド、アウトバンド問わず、顧客との接点を横断してシナリオを書いて顧客に接触しなければなりません。そして、顧客からのインバウンドの際にタイムリーに答えられるか、これは重要です。これらを限られたリソースで実行できる仕組みが必要であり、それを使ってROIを最大化することが大事なのです」(小笠原氏)