「IBMのトップマネジメントは営業職やハード製造部門から来るだろ。彼らの興味はハードの生産性だけだ。ソフトはハードを売るためのものぐらいにしか考えていなかったんだ」
上記はメインフレーム上のRDBMS製品として人気ナンバーワンだった北米Adabas社を率いたジョン・マグアイアの言葉です。(Oral History of John Norris Maguire)
そして、ソフトウェアビジネス市場は眠れる獅子が「それ」に気づいて覇権を奪いに来る1985年までの間に急成長を遂げます。
Software AG社のAdabas
一番人気がドイツに本社を置くSoftware AG社のAdabas。そして2位にOracleがメインフレームDBとして躍進し名を連ねています。VAX/VMSで開発をしていたOracleがメインフレーム市場でも人気を得たのはSQLに焦点を絞ったRDBMSだったことに起因します。当時、ラリー・エリソンは「我々ばSQLを売っている」と語ったそうです。パフォーマンスが少々悪くても(図中のTwo lowest ratings参照)「SQLインターフェースこそが将来の標準に繋がり開発効率のキーになる」と誰もが考え始めた時代です。そして、そのSQLのプロトタイプを作ったSystem RプロジェクトはIBMのプロジェクトなのに、そしてラリーエリソンにSQLを伝授したのもIBMだったのに……このアンケート調査ではDB2の人気は残念ながら4位です。
ここではリレーショナルでカテゴライズしているのですが、元来ネットワーク型(階層型の拡張)DBであるCullinet社のIDMSも6位にランクインしています。そしてユーザ数もAdabasに次いで多かったそうです。
さて、Adabasですが、製品が発表されたのが1971年ですから、遡るとエドガーコッドのリレーショナルモデル論が出る前に開発は行なわれていたことになります。そして、SQLという概念がこの世にない時代、独自のインターフェースとしてNaturalという言語を開発しました。その後、Naturalは他社のデータベースにもアクセスできるようになり、第4世代言語ブームを牽引することになります。
人気3位のDatacomは日本ではIDEAL DBという名前でデビューしています。この記事ではComputer Associates(CA)社の持ち物になっていますが、CA社が得意の買収でADR社 (Applied Data Research)から数年前に手に入れたものです。そしてCAは5位のIDMSもCullinet社から買収しています。