圧倒的な速さのIBM FlashSystemで、システムのトータルコストを削減
もう一つIBMが力を入れているのがオールフラッシュストレージだ。「2014年まではデータベースの一部を速くするといったパッチ的な利用でした。それが2015年からはシステム全体をオールフラッシュストレージが担うようになりました」(佐野氏)。この理由はIBM FlashSystemが安くて速いからだ。
容量単価を見れば、まだディスクストレージのほうが安い。しかし、IBM独自設計によるフラッシュストレージの圧倒的な速さとリアルタイム圧縮を組み合わせれば、総合的には安価になる。たとえば、データベースのストレージでは、高い応答性能を得ようと100本のディスクを並べてI/Oを分散させることがある。仮にリアルタイム圧縮で1本当たりの容量が50%に減らせても、50本に減らすことはない。ディスクを減らすとI/O性能が稼げず、レスポンスが低下するからだ。そのため容量が余ってもディスクは減らせず無駄が発生するのが普通だ。
一方でFlashSystemは、容量が満杯でも高い応答性能は変わらない。そのため、1つのストレージにぎりぎりまでデータを入れられる。圧縮が効けばさらにデータを詰め込めるだろう。「ハードディスクのように、I/Oの平準化を考える必要はありません」(佐野氏)。データベースが扱う数字と文字列を主体としたデータなら、圧縮率はかなり高くなる。場合によっては8割、そうでなくても6割は減らせる。仮に3分の1になれば、容量単価が3倍高くてもハードディスクと同程度の価格となるのだ。
さらに装置の大きさがかなり小さいのもフラッシュストレージのメリットだ。「今では2Uサイズに容量が50テラバイトを超えるモデルもあります」(佐野氏)。リアルタイム圧縮と組み合わせれば、全てをフラッシュストレージ移行することで、大幅なスペース削減が期待できる。
FlashSystemの圧倒的な高性能は、運用面の変化も促す。たとえばシステムのフルバックアップなどは、負荷の低い時に本番処理を止めて行う。ところがFlashSystemなら性能が低下しないので、処理を実行しながらバックアップをとれる。また設計やチューニングに時間やお金を掛けなくても、とにかくフラッシュ化することで大抵のものは速くなる。これは運用管理面でも有利となり、アジャイル開発などで開発者の思考を止めない環境の提供にもつながる。
また高性能によりデータベースなどのソフトウェアライセンス費用の削減効果も期待できる。データベース処理ではCPU稼動率はせいぜい30%程度、残りはディスクのI/O待ちだ。FlashSystemになればI/O待ちがほとんどなくなり、1つのCPUの稼動率を上げられる。仮に倍の60%の稼動率となれば、CPU数は半分でいい。データベースのライセンス費用はCPU数によって決まるので、数が半分になればライセンス費用も半減する。これによるコスト削減額はかなり大きい。速いCPUを搭載した安価なサーバーとオールフラッシュのストレージを新たに購入しても、ライセンス費用削減分で“お釣り”がくることもある。
フラッシュの選択が早すぎる、ということはもはやない
それでは、フラッシュストレージであれば何を選んでもいいのだろうか。「利用すると分かりますが、ハードディスクをシミュレーションしているSSDはそれほど速くありません。性能が欲しければ、専用設計のものを選んでチップ性能が最大限に活かせるものがいいでしょう」(佐野氏)。容量が欲しいとなると、コスト的にはディスクストレージのほうがまだしばらくは安い。しかし、IBM独自のリアルタイム圧縮をうまく使うことで、容量に対する要求にもフラッシュストレージで十分に対応できるケースは増えている。
もはや、フラッシュストレージを選択するのが、時期的に早すぎることはない。むしろ様子見をすることは損失だとも佐野氏は強調する。既存ストレージの減価償却が残っていても、新たにオールフラッシュストレージに置き換える検討は、今すぐにでもすべき時期に入っている。
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