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戦略的データマネジメント講座

データ管理基盤は“魔法の箱”ではない!データコンセプトを定義する【戦略的データマネジメント講座】


 「データ分析をしよう」と志したとして分析の対象データが質量ともに揃っているとは限りません。さらに、なんらかのデータがあったとしてそれが使えるとも限りません。一連のデータライフサイクル(作成→保存→利用→共有→アーカイブ→破棄)を俯瞰し、さらに将来の何に備えるのか。トータルでデータコンセプトを決めることが基盤アーキテクチャ、データアーキテクチャ検討の基礎になります。

データコンセプトの重要性

 データ分析~データ利用~共有は、『意思決定をより適切に行うために行う行為』であり、企業にとって、成長の具としてだけではなく、生き残りをかけた手段として面前・現実の課題になっていることを前回までに記載しました。そして、データの作成、保存の環境を整え、アーカイブ、破棄までも含めて適切にコントロールするデータマネジメントは必要不可欠だと確認しました。  

 さて、確認はできたのですが、「わかった。じゃあ、データマネジメントに今日から取り組もう。」と思い立ったとして、あるいは、「おい。データマネジメントについて調査してくれ。」と業務指示が来たとして何から着手すればいいのでしょうか。

 Extract/Transform/Load (ETL)ツールを、データマネジメントツールを、データウェアハウスツールを、ビジネスインテリジェンスツールを、ダッシュボードツールを、データ分析ツールを、アーカイブツールを、データセキュリティツールを――『検索』して、付き合いのあるベンダーに「ちょっとトータルで提案してよ」と依頼する。これでいいのでしょうか。  

 実は『検索』にはちょっとしたパラドックスがあります。 コンピュータの本質は計算機ですから、正確であることが大前提です。会計システムで計算結果が1円でも間違っていることなどあってはならないことです。そしてこのことから誰もがコンピュータは正確だと思っています。

 しかし、『検索』の結果が正確(=正しい)であると検証する方法はありません。多くの人は検索結果のリストや、その順位をなんとなく正しいものとして受け入れています。”なんとなく正しい”これが厄介です。  

 検索の一番有名なロジックに”みんなが参照しているものは有益だよね”というものがあります。『検索』して、たまたま1番上に来た記事を開くと有益カウントは+1され、1番上にきやすくなる。1番上にくるから、開かれ、開かれるから1番上にくる。ということは、どんどん加速していきます。

 こういう加速への疑問に対して、検索サイトも「ちゃんと対策されてますよ」という向きもあるでしょう。もちろん、その通り対策されているのでしょう。ですが、基本的な原理に変わりはありません。検索エンジンに人工知能が使われようと、”検索ワードそのもの”をデータとして処理し精度を高めていることに変わりはありません。

 検索を利用する以上、こうした加速はある程度不可避です。これは空港の書店でランキングを掲示すると加速度的にランキングが強化されていくのに似ています。つまるところ、データ分析を考えようとして、他社のデータ分析の力に乗っかり、その結果が正確かは検証不可能で、結果をなんとなく正しいものとして利用することにし、さらには検索結果としてでてきた事例にのっかる…となるわけです。

 みんなが参照している、使っているからそのツールを使おう。事例があるから、それに乗っかろう。このオペレーションの危うさは直感的に気づくと思います。この方法では絶対に1番になれないということであり、”作られた1番”に乗っかるということだからです。  

 振り返ってみれば、データ分析は競争の生き残りのための手段でした。基本的に2番煎じになると目的に沿わなくなるところもでてきます。定型的なもの、一般的なものに関して言えば当然、実績や事例が大切です。

 一方で、自社のアイデアについても実績や事例が大切なシーンはありますが、問うべきは、「どうすれば、自社にとって必要なものとして定義していけるのか」ということではないでしょうか。

 そして、その答えの1つがデータコンセプトです。データコンセプトに基づいてツールたちを選定し、コンセプトに基づいた分析を実施する。これにより、他社のやっていることは所与のものとして、それを超えていくことができるようになります。

次のページ
データコンセプトを定義する

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この記事の著者

藤田 泰嗣(フジタ タイシ)

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター
ビジネスとテクノロジを接続するテクノロジ領域のクラッチコンサルタントとしてアーキテクチャに関する経験を多数有する。ビジネステーマはTrustworthy DATA。 情報システム担当部門の業務改革を基軸に、データガバナンス改革、ワークスタイル改革などを手掛...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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