
コンピューターは効率化とともにありました。正確に、迅速に、安く――当初「計算機」と呼ばれたコンピューターは何より会計に利用されることになります。そこで求められたことは1円の狂いもない正確さです。しかし、これは1998年の検索サービス登場以降、劇的な変化を迎えます。検索の結果が正確であることは誰も保障しません。つまり、“なんとなく正しい”ことがコンピューターに認められるようになったのです。そして、今また、大きな変化を迎えています。データ分析の先に機械学習が、人工知能が見えてきました。
「現場力、現場の判断に任せる」という美辞の下、組織力の発揮に至っていない
データ分析の方向性として2つ可能性、「1.PDCAサイクルの超高速化」 と「2.OODAループの採用」があること、現実にはその組み合わせが行われていることについて前回で紹介しました。データ分析は経営の有り様を戦略、戦術レベルで変えてしまうエポックメイキングな道具といえます。

ここでもう1度、経営資源の3+1(ヒト、モノ、カネ+情報)における「情報」を現代経営の視点で捉えるならば、センサーとモニター、商品やサービス、意思決定者の3つをネットワークで束ね一体化する事で”高い競争力を確保する”と共に、ネットワーク内で情報を共有することにより”情報優位を創出”する。
つまり、「競争力確保」と「情報優位の創出」の両輪によって組織としての競争優位を獲得する「NDCO」(Network-Data Centric Operation)こそが、現代企業経営における競争力のあり方となりつつあります。
言い換えれば現代企業競争の勝利条件は、
- 組織内で情報を共有するとともに、競合やマーケットの情報をいち早く収集して情報優位を得ること
- 適正、的確なデータ分析、情報分析に基づいて情勢を判断し、速やかな意思決定と上位経営層から迅速な指揮が行われること
- 中下位管理層も同じ情報を共有し、主導的に同期行動を促し、自己同期の形成を行うこと
この3点を整えることとも言えるのです。
「情報共有にはずっと取り組んできた」「マーケットの情報は絶え間なく収集している」「集めた情報は分析している」「分析結果を施策に取り入れるなど当然だ」「組織内への情報の開示はセキュリティのバランスはあるが行ってきた」
こんな言葉が聞こえてきそうですが、取り組んできたこと、これらはおそらく事実であり、間違いではないでしょう。1つ1つの要素としては、すでに着手され完成しているものも、もちろんあります。
しかし、個々要素の統合、要素の全体最適、トータルで力を発揮する全体像の構築ができている例は稀です。そしてNDCOに対応する例はトップ企業を除けば未だ希少です。そもそもPDCAでは意思決定などありませんから埒外ではあります。
セルフサービスBI(セルフサービスビジネスインテリジェンス)の導入を現場担当者の不満解消のために行っていた事例があります。分析対象のデータセット変更、つまりデータを追加・変更するような場合にも専門知識やスキルを必要としないため、情報システム部がレポート作成するまでの数日から1週間を短 縮するというわけです。
この取り組みは相応の時短効果をもたらした一方で、組織トータルで見た時、意思決定をむしろ不透明にしていました。手元のPCで稼働する表計算のアプリケーションがセルフサービスBIアプリケーションに置き換わっただけになってしまっていたのです。
上位経営層の意思決定と自己同期形成するのではなく、現場力、現場の判断に任せるという美辞の下、組織力の発揮に至っていませんでした。
前回に紹介したOODAループもその構成要素を見ると、1つ1つはすでに取り組んできたことではあるはずです。つまり、どう各要素を進化させるのか、どう組み合わせて使うのか。これをトータルで考える必要があるのです。
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- この記事の著者
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藤田 泰嗣(フジタ タイシ)
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター
ビジネスとテクノロジを接続するテクノロジ領域のクラッチコンサルタントとしてアーキテクチャに関する経験を多数有する。ビジネステーマはTrustworthy DATA。 情報システム担当部門の業務改革を基軸に、データガバナンス改革、ワークスタイル改革などを手掛...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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