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マルウェアの「家系図」作りに魅せられて―FireEye 松田亜矢子さん


 今回登場するのは、FireEye Labsでシニア・マルウェア・リサーチャーを務めている松田 亜矢子さん。大学時代の研究対象は人工知能関連だった。「物語の自動生成をテーマとする研究室に所属していました 」。この頃はまだ、セキュリティとはほとんど関係のない世界だった。そんな彼女は、大学の卒業を控えある決断をする。

人との出会いでセキュリティの世界にどっぷりと

FireEye 松田亜矢子さん
FireEye 松田亜矢子さん

 「小さい頃から田舎で育って、このままだと世界が狭いなぁ、と。で、そうだ米国に行こうと思いました」(松田さん)

 それまで海外旅行すらしたことがなかった。なのに突然、米国に行こうと思い立った。直感と若さゆえに、不安もほとんど感じていなかったと振り返る。結局、米国の大学に留学することに。そこでは、英語に加えネットワークなどコンピュータサイエンスの基礎を改めて勉強する。

 留学生活の中で、インターンとしてセキュリティベンダーで働くチャンスがあった。「この会社の存在を知ったのは偶然ですが、こんなクールな世界があったんだと一気に興味を引き寄せられました 。それに、まだ日本ではセキュリティに対する危機意識がそれほど浸透していなかった頃なので、ここで技術を身につけてキャリアを積む上でのアドバンテージにしたいと思い、縁あってお世話になることになりました」。これが、セキュリティの世界に入るきっかけとなる。

 世界中で猛威を振るったワームの解析でも有名だったこの会社には、セキュリティの世界で有名な人がたくさんいた。ハッカーが集うセキュリティ・カンファレンス「BlackHat」で講演をするような人もいたのだ。ここでの出会いが、その後の進路に大きく影響する。

 インターン時代には、脆弱性情報の翻訳や製品の日本向けローカライズ、製品コンポーネントの開発などに従事する。「セキュリティの世界に入っても違和感はなかった」という。

セキュリティのことを調べていてFireEyeのファンになる

 3年ほど米国での大学生活とインターンを経験し、日本に帰国。日本でもセキュリティベンダーに就職する。

 「セキュリティのコアな部分については、日本に帰ってからどっぷりと浸かることになりました。普通の企業では経験できないようなことをたくさんやらせてもらいました」と松田さん。米国にいるときから、もっとセキュリティの深いところをやりたいという思いがあった。

 ここでは、主に自社のエンドポイントセキュリティ製品の開発や脆弱性に関する各種の研究開発プロジェクトに携わった。アプリケーションのソースコードスキャンを行い脆弱性がどのように潜んでいるかを調べたり、家電製品にファズデータ(予測不可能なデータ)を投入しクラッシュする様子を解析したりもした。

 5年ほどの間、とても濃密な他ではできない仕事をした。松田さんはこの経験を「下積み」と表現する。ここでセキュリティ製品の研究開発を5年ほどやって、製品が現場でどう使われているかを知りたくなった。そして、インシデントレスポンスにも興味を持っていたので、エンドユーザー企業を選んだ。

 ここでは、セキュリティに関する仕事がかなり幅広くあった。松田さんはここでマルウェア解析などを行うことになる。

 「解析をするために文献やインターネット上の情報などを当たっていたのですが、調べれば調べるほど、その著者や解析ツールの開発者などがFireEyeに名を連ねていることがわかってきました 。そうこうするうちに、だんだんとFireEyeのファンになっていたのです」

 FireEyeのどんなところに惹かれたのか。一番の魅力は技術力の高さだった。そんなファンとしての思いが募り、次に選んだ就職先はFireEyeだった。

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マルウェアをたどれば人間にたどり着く

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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