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大切なことはすべて500万行のソースコードに教わった――ワークスアプリケーションズ 井上誠一郎さん


 今回登場するのは、DBオンラインの人気連載「IT屋全力反省会」でもおなじみのワークスアプリケーションズ 井上誠一郎さんだ。ノーチラステクノロジーの神林さんのマシンガントークをパッと受け止めサラリと返す絶妙なバランス感覚を見せる井上さん、これまでどのような道程を歩んできたのだろうか。

Lotus Notesの500万行のソースコードを読み込んだことがベースに

ワークスアプリケーションズ 井上誠一郎さん
ワークスアプリケーションズ 井上誠一郎さん

 キャリアのスタートは、学生時代にインターネットのプロバイダーの立ち上げを手伝うところから。きちんとした就職活動はしたことがない。プロバイダーの会社の仕事では「UNIXを触っているだけで楽しかった」。ネットワークに関する知識も、ここで学んだ。

 若い頃の井上さんは、自分の意思で進んで行くというよりは周りの流れに任せるようなところがあったという。チャンスが目の前を流れてくればそれをつかむ。唯一自分から努力したのは、技術力を身に付けること。

 「明確な目標はありませんでしたが、ITスキルを身につけ、それで食べて行ければなと思っていました」。

 とにかくUNIXが好きだった。電子工学科の大学生時代にSunOSと出会い、その後はFreeBSDやLinuxを扱うようになる。プロバイダーでは、UNIXを使いメールの仕組みやDNS、Webサーバー、さらにはダイヤルアップ環境の構築まで行なった。

 プロバイダーの次に就職したのが、ロータスだった。

 「Lotus Notesが大きく普及していた頃で、優秀なエンジニアが集まっており、自由がありお金も使えた時代です。あの頃に出会った人との人脈は、今もつながっています」。

 就職後、すぐに「日本のロータスにいても、本当の開発はできない」と思った。上司にそれを訴えたところ、あっさりと「米国に行ってみるか」―こうして、米国マサチューセッツにあったLotus Notesの開発拠点でUNIX版Notesの開発携わることになる。3ヶ月という短い期間だったが、米国ではNotesのソースコードを見てプログラムを書きまくる日々を過ごした。

 日本に帰国して半年後、各国からエンジニアを募りソフトウェアの国際化チームを作ることになる。そのメンバーに応募し、再び米国へ行くことになった。ここからの2年間、ソースコードを見まくって、プログラミングする日々が続く。

 「2年間あればNotesのすべてのコードを読めると思いました。ソースコードの構造などをエディターのEmacsでメモにとりながら、とにかくソースコードを読むのに嵌まっていました。当時はNotesのバージョンがR5になる頃で、R4時代に500万行だったソースコードが700万行に増えました。その後のR6では1,000万行まで増えます。私はR6の途中で帰国しましたが、最初の500万行のソースコードから学んだことが、今のスキルのベースでもあります」(井上さん)

 日本に帰国してしばらく経ったときに、当時日本のロータスの開発部長だった栗村 信一郎さんらが、新たにアリエル・ネットワークを創業する。井上さんも栗村さんから声をかけられ、それに参画することに。このときも自身にはそれほどビジョンはなかったという。あったのは「おもしろそうだな」という好奇心。こうして、目の前に流れてきたチャンスを捕まえた。

 アリエル創業時の5名はみな技術者だった。なので、営業はあまりうまくいかなかった。新たな出資を受ける際に体制変更があり、現在ワークスアプリケーションズの役員であり、グローバルR&Dを担当している小松宏行さんが社長になった。結果的にアリエルは、ワークスアプリケーションズの子会社となる道を選んだ。

 アリエルがワークスと一緒になってからは、同じく現ワークスアプリケーションズ役員の原田氏が社長に就任、営業体制も強化され単独で黒字化も達成する。井上さん的には製品開発中心の楽しく仕事ができた時期でもあった。

 アリエルは、良くも悪くも「技術」にこだわった会社だった。その技術力とワークスアプリケーションズの人材力、そこにでCEOである牧野さんのアイデアが加わり「HUE」が生まれることになった。

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できることならすべてのコードレビューをしたい

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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