Oracleサーバーに依存せず、Standard Editionでも高可用性構成
レプリケーションとは、データベースのデータを二重、三重にコピーする機能。多くのデータベースには標準で実装されている。レプリケーションを使ってデータベースを二重化しておけば、マスターデータベースに障害が起きてもスレーブサーバーで処理を代替えできる。また、データ分析のための参照処理をスレーブサーバーで行なえば、マスターサーバーでのトランザクション処理に影響を及ぼさずに重たい検索用SQLの処理も可能だ。
標準のレプリケーション機能の多くは、マスターデータベースの更新をSQLを使ってスレーブデータベースに反映する。この方法の弱点は、データコピーの際にマスター側でサーバーリソースを消費することだ。なので、大量に更新がある場合は、データベースの負荷が増える。また、サーバー間を流れるデータ量も増え、ネットワークに十分な帯域がなければスレーブへの反映が遅延してしまう。
標準のレプリケーション機能では、マスターとスレーブは同じ規模のハードウェアを用意し、データベースの種類もバージョンも統一する必要がある。他にもファイルシステム・ベース、ストレージのブロックベースでデータベースの複製はできる。これらはデータベースサーバーに負荷は与えないが、トランザクションレベルでの更新ができないのが弱点となる。
一方で論理レプリケーションは、データベースのトランザクション内容をキャプチャしてスレーブサーバーのデータベースに反映させる機能だ。
「論理レプリケーション機能の元祖はSharePlexです」と語るのは、デル・ソフトウェア システム&インフォメーションマネージメント技術部 ソリューションコンサルタントの青木浩朗氏だ。
SharePlexは、デル・ソフトウェアの前身のQuest Softwareが1999年、Oracle Databaseのバージョン7の頃から提供を開始し、現在も機能向上の開発が続けられている。すでに世界中で2万3,500越えるインストールベースがあり、金融、通信、公共、eビジネスなど幅広い企業で採用されている。
SharePlexでは、Oracle DatabaseのREDOログを用い、トランザクションレベルでレプリケーションを行う。
「同様の機能には、Oracle GoldenGateがあります。こちらは2005年くらいに登場し、2009年にOracleが買収しました。SharePlexは、それより5年以上前から論理レプリケーション機能を提供しています。歴史があり、海外でも各種アワードを獲得するほど評価の高い製品です」(青木氏)
SharePlexは、OracleのREDOログからデータベースが変更されたところだけを抜き出す。そのための独自ログ分析エンジンを持っており、データベースとは別プロセスでキャプチャして変更点だけを抜き出す。データ複製の際にマスターサーバーにはほとんど負荷を与えず、REDOログ生成量の約1/3のネットワーク転送量で複製できる。レプリケーションツールの中には、ログ分析にOracleのLogMinerを使うものもある。しかし、これはレプリケーション用ではないので、SharePlexのエンジンより効率は良くない。
SharePlexが対応するOracle Databaseのバージョンは9i、10g、11g、12cと幅広い。バージョンが異なっていても、ハードウェアやOSが異なっていてもレプリケーションができる。また、Standard Edition、Enterprise Editionなど、Oracleのエディションが異なっていても問題はない。
「Oracleサーバーに依存しない疎結合のアーキテクチャを持っています。なので安価なStandard Editionでも高可用性構成が構築できます」(青木氏)
SharePlexでは、複製先はOracle Database以外でもいい。従来のMicrosoft SQL Server、SAP Adaptive Server Enterpriseに加え、SAP HANA、Teradata、EnterpriseDB Postgresのサポートも2016年5月から開始した。その他のデータベースも、ODBC経由で複製可能だ。またSQLデータベース以外のHadoopやApache Kafkaなどの新たなデータストアも、サポート対象に入っている。
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SharePlexなら安価に高可用性構成を実現可能
SharePlexは、多彩なレプリケーション適用パターンを持っている。参照用のレポーティング、可用性確保ためのフェイルオーバー、負荷分散や分散によるデータ保護のデータ分散、複数データベースからデータを収集するデータ統合、データベース移行などが実現できる。さらに複雑な双方向レプリケーション、テーブルデータを複数で持ち合う離散的な双方向レプリケーションにも対応可能だ。
インターネット・オークションサイトを運営するeBayでは、SharePlexを用い非同期でのデータ統合機能で、高可用性と参照系処理性能の確保をしている。更新系サーバーからレプリケーション機能で参照系サーバーを複数作ることで、スケールアウト構成を実現。大規模な参照処理性能を確保しているのだ。
国内では、関東、東北地域でスーパーマーケットを展開するマルトホールディングスの事例がある。東日本大震災を経験した同社では、災害時にスーパーマーケットがライフラインとなることから、災害対策に取り組んでいる。大規模震災時には、SIなどのパートナー企業の支援がすぐには得られない。またバックアップ、リカバリーでシステムを復旧するのも容易ではないことが分かった。少ない情報システム部門担当者だけで、確実に事業継続する。そのために選んだのがSharePlexだった。
マルトホールディングスでは、SharePlexで遠隔地にデータベースを常時複製しており、障害発生時にはアクセス先を切り替えるだけで業務継続できるようにしている。以前は、Oracle DatabaseのEnterprise Editionを利用していたが、SharePlexを採用する際にそれをStandard Editionに変更、コスト削減と同時に高可用性構成を実現した。これは、バージョンやエディションに依存しないSharePlexだからこそ実現できた災害対策構成だろう。
「小さい企業だから高可用性がいらないわけではありません。とはいえOracleの機能だけで高可用性構成を実現しようとすると、ソフトウェアや導入コンサルタント費用が大きく跳ね上がりなかなか手が出ません。SharePlexなら、安価なStandard Editionでも高可用性構成が可能です」(青木氏)
ちなみに機能的に比較されることの多いOracle GoldenGateとSharePlexの価格を比べると、同じハードウェア環境でEnterprise Editionでは約1.78倍、新しいStandard Edition 2では約7.2倍にもなるという試算結果もある。
セントラル短期FXでは、FXの取引システムでSharePlexを採用している。取引データベースや顧客マスター用データベースなどRACやHA構成のOracle Database Standard Editionの7つのサーバーからSharePlexのレプリケーション機能でリアルタイムに必要な情報を集め、分析用データウェアハウスを構築している。
以前は各データベースからデータ抽出し統合する処理は夜間バッチで行っていた。これに時間がかかるようになり別の方法を模索、結果としてSharePlexの特定テーブルのみ複製できる機能を用い、リアルタイムにデータウェアハウスのデータベースを更新するようにしたのだ。これで日次更新だったデータベースは常時更新されるようになり、リアルタイム分析が可能となった。さらに、データベースのアップグレード時にはStandard Editionに変えることで、リアルタイム分析環境でありながら低コスト化も実現している。
「銀行やカード会社などで分析や不正検知をしたければ、リアルタイムな分析環境は必須です。勘定系システムに影響を与えずにリアルタイムにデータベースを複製し分析環境を作るようなニーズは、今やかなり高いものがあります」(青木氏)
止めたくないシステムの移行も安全、安心に
もう1つ興味深い活用方法が、データベースの移行だ。全日空の事例では、SAP R3をSAP ERP 6に移行する際にSharePlexを活用した。
「機体整備のためのシステムで、止めることができませんでした。しかし正規の移行方法では50時間ほどの時間がかかる。そこでSharePlexを使ってシステムを一旦停止し、ある時点のデータを複製してERPの新バージョンへの移行を開始します。50時間の移行中も旧システムを稼働させておき、移行が終了したらSharePlexを再び用いて更新中に発生した旧システムのトランザクションを新システムに反映させたのです。これでシステムの停止は合計6時間で済み、飛行機の運航にも影響は出ませんでした」(青木氏)
SAP ERPでは、今後はOracle DatabaseからSAP HANAへの移行も増えそうだ。OracleのバージョンアップであればOracle社もサポートしてくれるが、他のデータベースへの移行ではそうも行かない。そんな際にもSharePlexなら、SAP HANAへのレプリケーションを正式にサポートしているのは心強い。
もう1つシステム移行時の保険としてもSharePlexが活用できる。Dellでは、SharePlexを使いグローバルCRMシステムの移行を行った。移行後、万が一新システムで問題が発生しても問題無きよう、新システムのトランザクションを旧システムにSharePlexで戻しておき、いつでも旧システムに戻れるようにしたのだ。
「世の中には、止まると何億円ものコストが発生するシステムがたくさんあります。それらの移行では、なるべくシステムは止めたくありません。止めない移行への要求もかなり高いものがあります」と青木氏。その際に一方通行の移行だけでなく、新から旧へデータを戻せ、同期を直す機能を標準で持っている点もSharePlexの評価が高いところとなっている。
「中堅中小企業の企業も、諦めてほしくないです」――そう青木氏は語る。
止めない移行やリアルタイムな分析環境、さらに災害対策構成などは、大企業だけが利用するものではない。SharePlexは大企業向けだけでなく中堅中小企業の運用するデータベースも対象だ。コンサルタントやSIの力に頼らずとも、情報システム部門自らが運用できる使いやすいGUIツールなども用意しているので、データベースの新たな活用を考えているのであれば、企業規模の大小を問わず、ぜひ一度SharePlexを検討してみてほしい。
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