そのような方向性で強化した機能の1つが、利用状況のモニタリングだ。これを使うことで、BIシステムの利用状況を分かりやすく管理者などに提示できる。この機能はパートナーなどのSI企業からも要望が多かったものであり、社内で継続的にBIツールを利用し日常的なツールとして定着させるのにも有効な機能だ。Dr.Sum EAは、どちらかと言えば「System of Record」の領域でデータの価値を高め、業務を効率化する役割を担うものだと言えるだろう。
今回のDr.Sum EAのマイナーバージョンアップでは、主に運用性、安定性の向上の部分に重きを置いているが「高速性についても今後まだまだ追求していきます」とも大畠氏は語る。
MotionBoardではリアルタイム性でIoTのデータの可視化を実現する
もう1つのBI製品であるMotionBoardは、新たなIT活用領域である「System of Engage」のところで新しいデータ活用を行うのに向いている製品だろう。そのためもあり、迅速な展開を意識してクラウドを重視している。さらには、地図データの活用なども強化してきた。
最新の「MotionBoard Ver.5.6」ではさらに、ここ最近もっとも注目されているIoTソリューションに対応する「IoT Edition」の提供も開始する。
「新しいMotionBoardでは、IoTを1つの基軸にしています。IoTにはこれまで、ネットワークのスピードやコストの課題がありました。それらがここ最近だいぶ改善され、データを集めるインフラは充実しています。まさにIoTを利用できる環境が整ってきたのです。とはいえ、実際にIoTでデータ活用をするとなると、まだまだ足りないものもあります」(大畠氏)
足りないものとは、IoTから上がってきたデータを簡単に見える化するための仕組みだ。このIoTに足りていない部分に対応するために、今回ウイングアーク1stでは、IoT Editionを提供した。
ウイングアーク1stは、単にIoT用の製品を提供しているだけではない。日本におけるインダストリー4.0の活動を推進している「インダストリアルバリューチェーンイニシアチブ(IVI)」にもサポート会員として参画。MotionBoardは、IoTから得られるデータの自動変換ツールとしてIVIで採択されている。そしてIVIのワーキンググループでは、実際にMotionBoardのIoT Editionを先行的に利用し実証実験も行っているとのことだ。
IoTなどが登場して「リアルタイム」というキーワードがさらに重要になっている。これまでは巨大なデータベースにどんどんデータを貯め、それを後から分析して何らか知見を得るのがBIの役割だった。これはデータベース型のBIと表現できる。それがこれからは、発信された情報をどんどん見える化してから、必要なものをデータベースに蓄積し分析できるようにするように変わってきているのだ。
また、従来の最初にデータベースにデータを貯める型のBIにおいても、いったんデータベースにデータを貯め、そのデータベースの中で何らか変化があったらそれを検知し、変更されたものをリアルタイムに可視化するニーズも出てきている。
IoTでもう1つあるデータの可視化のアプローチはAPI型だ。「APIプッシュ」を利用すもので、これはセンサーなどの情報をAPIで直接拾って可視化する。APIを利用するので、プログラミング開発が伴うことに。そのだめ、日本ではSI企業などが案件として受注し仕組みを構築することが多い。
3つめのIoTの可視化アプローチが、スマートフォン型だ。これは、スマートフォンのクライアントアプリケーションにエージェントプログラムを組み込んでスマートフォンが動くセンサーデバイスとなるものだ。このアプローチでは、スマートフォンのGPS機能を活用し、位置情報と併せたデータの可視化をすることになる。これら3つのIoTの可視化アプローチすべてにすぐに対応できるのが、MotionBoardのIoT Editionだ。
「たとえばスマートフォンにエージェントをインストールすることで、スマートフォンからプッシュで情報を得られます。これで、MotionBoardとスマートフォンが直接通信する仕組みを簡単に構築できるのです。得られた情報はMotionBoardのメモリー上ですぐに展開され、見える化できます。そのデータを永続化したければ、Dr.Sum EAやOracleなどのデータベースに蓄積します」(大畠氏)
スマートフォンから集めるデータに位置情報が入っていれば、MotionBoardの地図機能を使って簡単に地図上に情報を展開することができる。新しいMotionBoardでは、GISの機能も強化されており、最適化されたルート検索や到達圏分析、顧客が店舗で買い物をする確率を求める「ハフモデル分析」などのアルゴリズムが追加されている。地図表示だけでなく「GISの機能で一歩踏み込んだものを搭載しています」と大畠氏。