自社のことを「a leading provider of beautiful business applications specialized by industry and built for the cloud(デザイン性の高い業界特化型ビジネスアプリケーションをクラウド上で展開するリーダープロバイダー)」と言うのが、中堅、中小向け市場のERPで実績のあるインフォアだ。自社提供のアプリケーション製品を表すのに「beautiful」という単語を使うのは、日本人感覚的にはなかなか難しそうだ。
マイクロバーティカルなアプリケーションをAWSのインフラでグローバルに展開

そんなインフォアをCEOとして2010年から率いているのが、チャールズ・フィリップス氏。彼は、インフォアに移る直前まで米オラクルのプレジデント、当時はラリー・エリソン氏の後継候補の筆頭とも言われていた。米国ニューヨークで開催されたインフォアの年次カンファレンス「inforum 2016」のゼネラルセッションのステージに登場したフィリップス氏は「5年間でインフォアのビジネスの状況は大きく変わりました」と言う。インフォアはこれまでさまざまな業界向けにアプリケーション製品を提供しており、その中でそれぞれの業界のことをより深く理解しようと努力してきた。その結果として、インフォアの製品戦略の柱となっているのが「マイクロバーティカル」という取り組みだ。
マイクロバーティカルは、特定業界用に極めて特化したアプリケーション製品を提供するもの。各業界独自の要求を、アプリケーションの標準機能として積極的に取り込んでいる。結果的に業界ごとに細分化されたアプリケーションラインナップができあがっている。マイクロバーティカルなアプリケーションは、業界に属する企業が基本的に必要とする機能を実装しているので、カスタマイズなどをあまりすることなく迅速な導入ができることが強みだ。このマイクロバーティカルなアプリケーションを開発する際に、業界ごとに技術を孤立化しないことが重要だ。
「1つの業界用のアプリケーションでうまく行ったことを、他の業界のアプリケーションにいかにして適用できるのか。それを常に考えています」(フィリップス氏)
たとえば製造業のサプライチェーン・マネージメントの最適化の仕組みは、ヘルスケアや医療の分野で必要とされるそれとは異なるものになるだろう。違うからとそこで技術を閉じてしまうのではなく、製造業でうまく行った技術をヘルスケア分野に応用することで、新たな革新を生み出すのだ。実際にそういうアプローチをとってきたことで、ヘルスケア分野においても画期的なサプライチェーンの仕組みを提供でき、それが多くのインフォアのこの領域での多くの事例につながっている。こういったアプローチも、インフォアの他社に対する優位性となっている。
そのインフォアのERP中で、現状力を入れているのがデータサイエンス技術のところだ。データを使い科学的なアプローチでビジネスプロセスを「最適化」する。ここでは、機械学習なども取り入れ、より精度の高い予測機能などを提供している。これはインフォアのアプリケーションの中に、ユーザーが利用するデータサイエンス向けツールがあるわけではない。ERPで行う処理の裏側でデータサイエンス的な分析が行われており、それにより最適解を提供し、プロセスの自動化を行っているのだ。これを実現するために、インフォアの内部にデータサイエンスの専門部隊「Infor Dynamic Science Labs」があり、そこでデータサイエンティストたちが業界特有のビジネス課題を解決すべくERPに蓄積されるデータに対し科学的アプローチで取り組んでいる。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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