ファーウェイとは?
イベントの内容に触れる前に、ファーウェイについて補足しておこう。日本国内でファーウェイという企業名から想起されるイメージは「中国のスマートフォンメーカー」というイメージを持たれている方が多いのではないだろうか。
ファーウェイは1987年に中国・深センで任正非(レン・ジェンフェイ)によって設立された。レン氏はメディアに滅多に登場しないことで知られており、創業当時から中国国内でも「謎に満ちた企業」と表現されることも多かったため、日本国内で知られていないのも無理はない。
そんなファーウェイだが、コンシューマー向け端末事業、通信事業者向けネットワーク事業、法人向けICTソリューション事業の3つを事業の柱としており、世界170ヶ国以上にICTソリューションを提供し、世界人口の3分の1にも及ぶ人々のニーズに応えている。従業員数は17万人、売上高は7兆円を超える、世界有数のグローバルICTソリューション・プロパイダーだ。
各事業領域のポジションもコンシューマー向け端末事業、通信事業者向けネットワーク事業は、共にグローバルトップ3に名を連ねている。この2つの領域では、アップル、サムスン、エリクソンがファーウェイの競合となるが、スマートフォン需要や4Gインフラ需要が一巡したこともあり、ライバル陣営の業績は停滞している。にも関わらず、ファーウェイの業績は過去5年間で売上高の年平均成長率(※過去5年間の成長率)を平均した数値が18%、営業利益の成長率平均は25%と高い成長率を維持している。
変化に対応する前提で考えられた「輪番CEO制度」
競合他社が足踏みする中で、高い成長率を維持し続けるファーウェイには、他社にはない独自の制度が存在する。その一つがCEOの輪番制度だ。ファーウェイは2011年度の年次報告書の巻頭で、輪番CEO制度を導入することを表明した。これは取締役会から選出された3名の代表者が、任期6か月のCEO職を輪番で担当するという制度。この制度の必要性をこう説明する。
「変化の激しい時代において、いくつもの業務を処理し、深い洞察力を備え、正しい方向づけをするといったことを1人のCEOに期待するよりも、複数のCEOがそれを輪番で受け持つほうが効果的であると、当社は考えます」
そして、一人の権力者に組織を委ねる危うさについて、中国のことわざ「どの皇帝も自分のお気に入りを集めて内閣を作る」を用いて、組織が硬直化するリスクと、輪番CEO制度はこういった状況を回避できる利点があると述べる。
最強の株式非公開企業
さらに、これだけの規模と実績を保ちながら「株式は非公開」だ。株式が非公開であることによって、ファーウェイは四半期ベースの報告義務から解放され、長期的な視点で自社の顧客と従業員の利益増大に注力することが可能だ。ファーウェイは、まさに「世界最強の株式非公開企業」と呼べるだろう。