というわけで、今回はメディア限定セッションとして行われたジェイミー・ポプキン(Jamie Popkin)さんによる「2017年の戦略的テクノロジトレンドのトップ10」の説明をもとに、インタビュー風に再構成してお届けします。ポプキンさんはガートナー リサーチ部門のデータストラテジチームに所属するバイスプレジデント兼ガートナー フェローの肩書をもつアナリストで、テキストアナリティクスやビジネスアナリティクス、センチメント分析などをカバーする、いわばアナリティクスの超専門家です。近未来のトレンド予測はITの専門家にとっても非常に難しいものですが、そこは世界屈指のリサーチカンパニーのスペシャリストですからね、しっかり2017年のITを占っていただきましょう!
10のトレンドはリストではなく"デジタルメッシュ"を作るためのレシピ
ポプキンさん: 最初にお伝えしておきますが、「2017年の戦略的テクノロジトレンドのトップ10」といっても、10のトレンドをずらずらとリストのように並べることはしません。なぜならそうすることにあまり意味がないからです。
―でも10個あるんですよね。それなら10個を並べてくれたほうがわかりやすいです。
ポプキンさん: もちろん10のトレンドはありますが、これはリストではなく"レシピ"と考えてください。1から10までのリストだと、最初に挙げた項目を重要に捉えてしまうでしょう? そうしていただきたくないのです。料理のレシピのように、これから挙げるトレンドを捉えてほしいのです。
―料理のレシピ、というなら、そのレシピでもってどんな料理を作り上げるんですか?
ポプキンさん: それが今回のセッションの主題です。2017年のITにおいて重要となるキーワードは「インテリジェントなデジタルメッシュ」です。これから挙げるトレンドは、このデジタルメッシュを作り上げるための材料だと思ってください。
―すみません、"デジタルメッシュ"ってそもそもなんでしょうか。メッシュ(網)というからにはネットワークの相互接続みたいな感じですか。
ポプキンさん: デジタルメッシュは、これまでのプラットフォームに比べて非常にきめ細やかな、粒度の細かいインフラです。単なるネットワークの相互接続ではなく、ありとあらゆるモノがあらゆる形態で、それも自律的(インテリジェント)につながる基盤です。このデジタルメッシュを編み上げるのが、これから説明する10のトレンドになります。
なぜデジタル"メッシュ"という表現を使っているのか、それはつながるモノの数が膨大になりすぎて、これまでのように単純なネットワーク接続の概念を超えるからです。具体的な数をいえば、2020年までに配備される接続ずみのIoTセンサーおよびエンドポイントの数は210億を超えると予測されています。また、2018年までにはおそらく25以上の会話形AIシステムが出現するといわれています。既存のエコシステムがすべて統合され、その上でさらに成長を続ける"ファイナルメッシュ"を想像してもらえば。
―エンドポイントどうしを多様なサービスがさまざまな形態でつながりあい、きめ細やかなメッシュでもって地球を覆っていくかんじなんですね。では、そのデジタルメッシュを編み上げるトレンドには何があるのでしょうか。
ポプキンさん: まずは以下に挙げておきましょう。先にも申し上げたように、リストではなくデジタルメッシュ実現のための"レシピ"として見てください。
- 会話型システム
- 拡張現実と仮想現実
- デジタルツイン
- 高度な機械学習とAI
- インテリジェントなアプリ
- インテリジェントなモノ
- アダプティブセキュリティアーキテクチャ
- メッシュのアプリ&サービスアーキテクチャ
- ブロックチェーンと分散型台帳
- デジタルテクノロジプラットフォーム
―どうしてもリストとして見てしまいそうになるのですが…、レシピというからには料理の作り方のように、これらのトレンドを使ってどうデジタルメッシュな世界を作っていくか教えてほしいです。
ポプキンさん: そうですね。ではこの10のトレンドを3つに分けて、デジタルメッシュを編んでいくプロセスを説明しましょう。