10月に開催されたSalesforce.comの年次カンファレンスイベント「Dreamforce」では、AIソリューションの「Einstein」が大きなテーマとして取り上げられた。Salesforceの場合はAI技術の高さを競うよりは、AIの民主化を目指しているように感じている。なので、Salesforceのアプリケーションを利用している裏側でEinsteinが適宜動き、賢い判断のサポートや正確な将来予測をしてくれるようになるのが主流だ。まだまだEinsteinは発表したばかりのソリューションであり、今後徐々にAI機能が追加されSaaSに組み込まれてくるようだ。
新たなAI技術のEinsteinのコンポーネントは、PaaS環境のHerokuで動いている。SalesforceのPaaSというと独自の開発言語、開発環境であるforce.comを思い浮かべてしまう。しかしながら、それと組み合わせてPaaSの世界を大きく広げるのがHerokuだ。App Cloudのプラットフォームであるforce.com、Herokuを担当するCTO モーテン・バガイ氏に、Salesforceのプラットフォーム戦略について話を訊いた。

新たにforce.comの外でソースコード・ドリブンな開発ができるように
―Dreamforceではデベロッパー向けの基調講演が行われました。Salesforceは開発者にどのようなメッセージを伝えたかったのでしょうか?
バガイ:Salesforceの開発環境に関する、長期的ビジョンを明確にすることが目的でした。force.comとHerokuのすべての機能を利用したアプリケーションがどんなものになるのか、その姿を明らかにしました。このバックグラウンドは、5年前にHerokuを買収し、以降次世代のSalesforceプラットフォームを作ろうとしてきたことがあります。次世代プラットフォームで、開発者の経験を1つにすることも目標です。
さらに、次世代のプラットフォームではアプリケーション・ライフサイクル管理ができることも求められています。そのためにforce.comに機能を追加し、Salesforce DXを提供しています。Salesforce DXでは、開発したアプリケーションのプロビジョニングの新しい方法であるscratch orgがあり、これを使うことで高速にプロビジョニングが行えます。
またソースコード開発をforce.comの外でも行えるようにしました。これにより、ソースコード・ドリブンの開発をforce.comにも提供しています。これらの機能を使ってforce.comの外で開発したソースコードを、自動的にSalesforceの環境に配置できます。これで、継続したデリバリと継続したソースコード・ドリブン開発が可能になるのです。この機能の実現には、Herokuの中にあるContinuous Deliveryを適用しています。
ソースコードを外に出したことで、force.comで新たな開発を行おうとしているエンジニアは、過去の資産を活用できることにもなります。またSalesforceをこれまで使ってこなかった開発者に対しては、Salesforceのプラットフォームの利用を広げることにつながるでしょう。開発者はSalesforceのプラットフォームで新たな体験ができ、その結果生産性も向上するのです。
―具体的にソースコードを外に置くというのは、どういう仕組みですか?
バガイ:外に置くための仕組みとしてHeroku Flowがあります。ここではGitHubを使っています。これはGitHubに限るというわけではありませんが、現状多くのエンジニアがGitHubを使っているので、1つの使い方として採用しています。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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