「ベアメタル」で基幹系システムもクラウドで
基幹系のシステムをクラウドで動かす話題と同時に、よく耳にするようになったのが「ベアメタル」と言う言葉だ。ベンダーがあらかじめ用意している仮想化技術を用い、リソースを共有するのがパブリッククラウドのIaaSの基本。これとは異なり、ベアメタルクラウドでは雲の向こうでも物理サーバーを占有できる。
ベアメタルクラウドの物理サーバーなら、オンプレミスで利用している仮想マシンの環境をそのまま動かすことも可能だ。なので、既存のオンプレミスの基幹系システムも、ほぼ手を加えることなくベアメタルクラウドに移行できるわけだ。
ベアメタルクラウドのサービスとしては、IBMが買収したSoftLayer(IBM Bluemix Infrastructure)が有名だ。国内では、NTTコミュニケーションズなども早い時期からベアメタルのサービスを提供している。さらに最近になり、マイクロソフトも「SAP HANA on Azure(Large instances)」をベアメタルで提供している。これはSAP HANA用に事前チューニングされたもので、OLTP用には最大4テラバイト、OLAP用には最大32テラバイトと仮想サーバー型ではなかなか用意できない大規模なメモリサイズをサポートするのが特長だ。
このような動きがある中、クラウドでは後発のOracleも、2016年10月から「Oracle Bare Metal Cloud Services」を北米で提供している。このベアメタルのクラウドを含むOracleのIaaSは、コストパフォーマンスが高いだけでなく他社にはないユニークなものだと言うのは、日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 Cloud/Big Data/DISプロダクト本部 ビジネス推進部 担当マネジャーの山本祐介氏だ。
Amazon Web ServicesやMicrosoft Azureが築いてきた、第一世代のサブスクリプション型で拡張性がありすぐに使えるクラウドのメリットと、Oracleが長年オンプレミスで実績を積んできたマネージドの堅牢性ある仕組みを一緒にしたいいとこ取りをしたもので、次世代のIaaS基盤だと山本氏は主張する。「OracleのIaaSは、第一世代のクラウドを作ってきた人たちがOracleにやって来て、数年かけて作ったものです」(山本氏)。
中でもBare Metal Cloud Servicesは、オンプレミスの基幹系システムなどの大規模なワークロード移行に完全に対応するものだ。基幹系を動かす高可用性を確保するために、独立した3つのAvailability Domainの構成をとっており、各リージョンを低レイテンシーで結ぶ広域なネットワーク接続を保証している。これはエンタープライズ仕様である。またデータセンター内においても、メッシュ型のネットワークを採用しており、ここもOracleならではのところだ。
「Bear Metal Cloudには36コアのマシンを用意しています。もちろんこのベアメタルの上で仮想サーバーも利用できます。物理サーバーを1台まるごと利用するもの、ベアメタルの上でOracle VMを利用するもの、さらにはベアメタルの上でコンテナ型のサービスも今後提供します」(山本氏)
もう1つ、Oracleでは、ユニークなベアメタルのサービスを提供している。それが「Oracle Database Cloud Service」のベアメタル版だ。通常のOracle Database Cloudは、共有型IaaSの上で動くデータベースのPaaSで共有型のクラウドサービスだ。対してベアメタル版は、Oracle Bare Metal Cloud Servicesの物理サーバーの上でデータベースを動かすPaaSだ。なんだかややこしいが、Oracle Databaseをクラウドで動かす際のインフラの種類が異なるわけだ。ベアメタル版では、データベース用に1台の占有サーバーが割り当てられる。これでパブリッククラウド上であっても、オンプレミスの自前サーバーと同じようにワークロードを捌ける。
これに加えてOracleには「Oracle Database Exadata Cloud Service」もある。これは仮想化を使うことが前提のサービスではあるが、Oracle Exadataの高性能はクラウドでも変わらないと山本氏は言う。仮想化は入っているが割り当てられるリソースは占有でき、Real Application Clustersも標準だ。Bear Metal Cloudのベアメタル版よりもさらに高いIOPS、低レイテンシーのデータベースシステム向きのサービスとなっている。