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「企業規模別に明確な棲み分けを」―創業者に訊いた、Oracleとの統合後のNetSuiteのこれから

NetSuiteは、Oracleの中のグローバル・ビジネスユニットとして独立性を保った形でビジネスを続けることになった。そのNetSuite グローバル・ビジネスユニットの責任者であるジム・マッギーバー氏と、NetSuite社の創業者であり、NetSuiteグローバル・ビジネスユニットでは開発部門の責任者を務めるエバン・ゴールドバーグ氏に、Oracleとの統合後のNetSuiteについて話を訊いた。

Fusion AppsとOneWorldはOracleの中では企業規模別に明確に棲み分けることに

NetSuite グローバル・ビジネスユニットの責任者であるジム・マッギーバー氏
NetSuite グローバル・ビジネスユニットの責任者であるジム・マッギーバー氏

Q:OracleにはERP製品としてOracle Fusion Appsがあります。NetSuiteのOneWorldとはどのように棲み分けるのでしょうか?

マッギーバー氏:NetSuiteのOneWorldの特長はシングルデータベースでシンプルなアプリケーションです。データベースもトランザクションも全てが1つにまとまっており、ユーザーインターフェイスも1つに統合されています。そしてマルチテナントでクラウドネイティブなサービスを、クラウドだけで提供しています。こういう形でERPを提供しているのはNetSuiteだけでしょう。この仕組みにより中堅、中小規模の企業でも、簡単にメンテナンスして管理できます。

 一方Fusion Appsは、エンタープライズ向けのアーキテクチャを持つ製品です。中堅、中小企業が使っても、エンタープライズレベルのアーキテクチャと機能を持った製品となります。結果的にFusion Appsは、CRMの製品を買う、あるいは会計の製品を買うというように、大手企業が欲しい機能ごとにサービスを導入することが多くなります。

 対してOneWorldは、中堅、中小規模の企業が最初からスイートとして導入する傾向があります。OneWorldなら、スイート型のERPをほとんどカスタマイズなしで導入できます。大手企業で、カスタマイズなしで一気にスイート型ERPを導入するのは、現実的にはかなり難しいでしょう。OneWorldは今やあらゆるサイズの企業が使えるサービスへと成長していますが、Oracleとの統合により大規模なエンタープライズ向けがFusion Apps、ミッドサイズ以下の用途がOneWorldと使い分けが明確化しています。

Q:今回新たにインダストリーに特化したサービスを強化すると発表し、SuiteSuccessを発表しました。これはいったいどういうものですか?

マッギーバー氏:SuiteSuccessは、インダストリーに特化したプロダクトであり、さらには導入のための方法論でもあります。じつは過去に何度かSuiteSuccessのようなものを提供しようとしましたがなかなかうまくいきませんでした。当時は、一度に全ての問題を解決するのが難しかったのです。そこで2年半前から改めてプロジェクトをスタートし、アプローチ、方法論、製品、サービスまでを1つの集合体に作り上げたのです。

 NetSuiteには、すでにそれぞれのインダストリーで成功を収めた企業がたくさんあります。それらのベストプラクティスのプロセスを体系化し、サービスまで含めパッケージ化したのがSuiteSuccessです。現状は8つのインダストリーに12のプロダクトがあります。今後はこれをさらに拡大していくつもりです。

 拡大の方向性の1つとしては、マイクロバーティカルなインダストリーを増やします。これはたとえばリテールの世界で、ファッション・アパレルのインダストリーに特化した製品をますは提供します。リテールには他にもさまざまなものがありますが、ファッション・アパレルを最初に作れば、多くの要素は他のリテールとも共通となります。そこでそれをベースにさらに細かい単位に細分化して、それぞれに対応するパッケージを作ります。たとえば「大学内の書店」といったかなり細かいレベルを対象にします。

 このマイクロバーティカルの考え方には、たとえば日本独自のリテールというようなローカライゼーションに近いものも含まれます。

Q:ところでOracleのクラウド戦略では、パブリッククラウドだけでなくオンプレミスやプライベートクラウドも適宜活用するハイブリッドクラウドを推奨しています。NetSuiteではハイブリッドクラウドをどう捉えていますか?

マッギーバー氏:ハイブリッドクラウドの要求があるのは理解しています。しかしこれは、本来の企業ニーズに応えるためのものだとは思っていません。ハイブリッドクラウドは、問題解決の方法ではなくサービス購入の仕方だと認識しています。NetSuiteはパブリッククラウドだけで問題解決をしているので、現状でハイブリッドクラウドについては考えていません。

Q:日本にデータセンターや開発拠点を開設すると基調講演で表明しました。そういう動きがある中で、日本市場に対する期待は?

マッギーバー氏:日本向けのローカライズは、NetSuiteの中でもベストなものの1つです。製品は良かったのですが、日本にはNetSuiteの十分なブランディングがありませんでした。これからはOracleのブランディングを使い、日本でも大きな声を上げることができると考えています。それにより、日本のデータセンターや開発拠点の開設と合わせ、グローバルの中でももっとも早く成長する市場になって欲しいと期待しています。

Q:今回のイベントでは、Oracleとの統合は前向きな話題ばかりでした。統合によるマイナスの面はありますか?

マッギーバー氏:Oracleが極めて大きな組織なので、時々ビジネスの進め方がこれまでと違うなと感じることがあります。たとえばリーガルに関するような処理は、組織が大きく今までよりも時間がかかるなどです。さらにOracleにはたくさんの製品があり、それらに関わる大勢の人がいます。Oracle CEOのハード氏は、そのたくさんの製品全てを伸ばそうと考えています。対して我々はNetSuiteをどう伸ばすかを考え、そのためのチャレンジをどうするかに頭を悩ませます。こういったOracle全体とNetSuite単体のやり方を比べてしまうことはあります。

Q:基調講演では、競合としてマイクロソフトやSAPの名前が挙がっていました。昨年はWorkdayなどの名前も挙がっていましたが、現状で競合をどう見ていますか?

マッギーバー氏:我々にはたくさんの競合があると考えています。たとえば、マイクロソフトやInfor、SAPなどが競合です。さらにオンプレミスの世界でミッドレンジの企業を対象とするものは、全て競合となります。日本ならオービックなどが競合だと認識しています。

 クラウドの世界でも競合はありますが、彼らのほとんどが「フランケンクラウド(フランケンシュタイン型クラウド)」です。フランケンクラウドとは、クラウドネイティブなサービスではなく、ホスティングモデルのサービスのことです。そういう意味では、純粋なクラウドサービスの競合はいないとも言えます。

Q:ところで、エリソン氏からはどんなアドバイスがありますか?

マッギーバー氏:より深くインダストリーに特化した取り組みをしなさい、さらにセールスの組織を増やしなさいと言われます。じつはこれ、彼がNetSuiteのボードメンバーにいるときからずっと同じ意見で、何ら変わっていません。

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開発の体制もメンバーも方針もこれまでを継承する

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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