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InforのAI機能「Coleman」に込められた思いとは


 2016年末に米国で公開され、第89回アカデミー賞のノミネート作品になったことでも話題となった映画『Hidden Figures』をご存じだろうか。これは米国初の有人宇宙飛行計画「マーキュリー計画」の成功を、陰で支えた実在の黒人女性たちの活躍を描いた作品だ。日本では2017年9月29日から『ドリーム』という邦題で公開される予定。ちなみに当初は『ドリーム 私たちのアポロ計画』という邦題だったが、主に劇中で扱われているのがマーキュリー計画でありSNSなどでおかしいとの批判の声が上がり、後に日本での配給元である20世紀フォックスの公式Twitterでタイトルを『ドリーム』に変更したことが発表されている。

米国発の有人宇宙飛行計画「マーキュリー計画」を支えた陰の功労者

 邦題の良し悪しはさておき、みなさんはマーキュリー計画をご存じだろうか。米国航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration : NASA)のマーキュリー計画は、米国とソ連の宇宙開発競争が激しくなった頃である1959年から1963年に実施された米国初の有人宇宙飛行計画だ。人間を地球周回軌道上に送り、安全に地球に帰還させることを目標としていた。NASAで働く黒人女性のキャサリン・ジョンソン、メアリー・ジャクソン、ドロシー・ヴォーンの3名は、白人と有色人種の分離政策が行われていた時代に、偏見や差別と戦いながら科学史に残る偉業であるマーキュリー計画の達成に大きな貢献をすることになる。

 物理学者であり数学者でもあったキャサリン・ジョンソン氏は、地球周回軌道から宇宙船が無事に地球に戻ってくるために必要となる軌道計算を行っている。彼女の貢献は、後のアポロ計画で人間が始めて月に行く際にも重要な技術となる。2015年になりNASAでの功績をたたえ、ジョンソン氏はオバマ大領から大統領自由勲章を授与されたために米国でも知られる存在となった。またNASAのコンピュータ施設には、ジョンソン氏を記念する名前も付けられている。

 ちなみにジョンソン氏がマーキュリー計画で利用していたのは、IBMの当時のメインフレームコンピュータ「IBM 7090 Data Processing System」だったそうだ。IBMでは、映画の中に登場するIBMのコンピュータを紹介する動画をYouTubeで公開しており、その中ではパンチカードを扱う様子などが登場する。

InforのAI機能はキャサリン・ジョンソン氏の名前をもらった

 ところで、先週米国ニューヨークで開催された「Inforum 2017」で、もっとも大きなトピックスとなったのがAnalyticsレイヤーの上に載ることになるAIのプラットフォーム「Coleman」の発表だった。このColemanと言う名前は、前出のキャサリン・ジョンソン氏の正式な名前となる”Katherine Coleman Goble Johnson”に由来するものなのだ。

 Inforum 2017の基調講演会場にはジョンソン氏の家族も来場しており、ジョンソン氏の功績がビデオで紹介されると会場の参加者からスタンディングオベーションが巻き起こった。ジョンソン氏の家族は「Inforがイノベーションと分析能力、卓越性への継続的な取り組みを表す言葉として、私たち家族の誇りであるキャサリンを選んでくれたことを大変嬉しく光栄に思っています。彼女は、困難から立ち直ろうとする多くの人々の灯台となり、勇気の源となり、可能性という希望の象徴です。キャサリン・コールマン・ジョンソンにとって、価値があるのは既知のことではなく、知識を共有することなのです」とコメントしているとのことだ。

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Colemam家のみなさん

 InforのColemanは、IBMのWatsonのような汎用的なAIのサービスではない。Colemanは、Inforの業界特化のクラウドアプリケーション群である「Infor CloudSuite」の中で利用されるAI機能のブランドネームとなっている。そういう意味では、Salesforce.comのサービスの中で活用されるAI機能「Einstein」と似たような位置づけと言えそうだ。

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汎用的なAI機能ではなく、業界にフォーカスしたAIプラットフォームをクラウドで

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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