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(第17回)  素早い仮説検証と「組織での学び」を得る仕組み

  2013/05/29 08:00

いまだ市場自体が存在しない領域で、商品と同時に顧客も開発することが求められるイノベーションの領域。イノベーションの創出という新たなビジネス課題の解決のために求められるのは、従来型の商品開発プロセスではありません。顧客開発モデルがベースとなったリーン・スタートアップ的なプロセスが求められています。今回は顧客開発プロセスの可視化ツールの1つである、「バリデーション・ボード」も紹介しつつ、顧客開発モデルによる新たな商品&サービス開発プロセスが必要とされる背景を説明します。今までの記事は、こちら

一度も市場との接点を持たないまま、消えていく多くのアイデア

 イノベーションの創出のためには、従来思いつかなかったようなアイデアを見つけなくてはなりません。でも、そうした革新的なアイデアは、ただブレインストーミングやワークショップを行うだけではなかなか生まれてくることありません。「アイデア創出の場」そのものに工夫が必要だということは、これまでの記事でも紹介してきました。

 けれど、イノベーション創出で難しいのは、何も画期的なアイデアを生み出すところだけではありません。それ以上に、むしろ多くの企業の現場で苦労しているのは、「生まれてきたアイデアを“具体的な商品やサービスへと展開させる”」ところではないでしょうか。

 多くのアイデアが生まれても、受け入れてくれる市場があるのか確かめないまま放置されることもよくあります。生まれたアイデアのほとんどが「日の目を見ることもなく忘れ去られてしまうこと」が、ある程度の規模以上の組織になると多くあることだと思います。一度も市場との接点が持たれないまま、消えていくアイデアがとても多くあるはずです。

 それは単にその企業にとっての損失というだけでなく、社会的にも新しい価値が生まれてくる機会を知らぬ間に失ってしまっているという意味で“大きな損失”です。

図表1.市場との接点を見出せないアイデアが多い

 「イノベーションの創出につながる可能性もあるアイデア」の是非を、一度も市場に問うことなく忘却してしまうという残念な状況が起こってしまっているのは何故でしょう?

 一番の問題は、従来のように、既存の商品カテゴリー内でシェアを争うのに最適化させた商品&サービス開発のプロセスのまま、イノベーション創出を目指してしまっていることだと思います。

 今まではあらかじめ存在する「商品カテゴリー別の市場」では、新規参入の障壁も比較的高く保たれていたため、限定されていたプレイヤー同士で、当該市場の顧客を奪い合う競争に勝ち続けることがビジネス成果につながる環境でした。ある程度の確実性のなかでの緻密な計算を行ったり、考え抜かれた計画を滞りなく実行したりすることが成果をあげる方法でした。

 そして、市場や顧客も含めて新たに創出しなくてはならない「イノベーション創出」という不確実性の高さが特徴である競争環境で、同じような計算と計画に基礎をおく“従来型”の方法をそのまま疑いなく適用させてしまいがちです。計算や計画をこえた想定外の変化が次々に起こることが当たり前の現在の環境では、うまく成果につながらないのは当然です。不確実性というリスクが従来の方法の前に立ちはだかります。

 従来型のプロセスのまま進めようとしたのでは、イノベーション創出のために必要なリスクをとる判断ができません。同時に、リスクをできるだけ軽減させるために行うべき、細かなサイクルでの「仮説検証による学びの獲得」ができません。

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著者プロフィール

  • 棚橋弘季(タナハシヒロキ)

    棚橋弘季(たなはしひろき) 株式会社ロフトワーク所属。イノベーションメーカー。デザイン思考やコ・デザイン、リーン・スタートアップなどの手法を用いてクライアント企業のイノベーション創出の支援を行う。ブログ「DESIGN IT! w/LOVE」。著書に『デザ...

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