Oracleが買収した中堅中小、スタートアップ企業で評価の高いERPの「NetSuite」や、ITサービスのSaaSで高い評価を得ており最近はPaaSとしての認知も上がってきた「ServiceNow」もかなり元気だ。またSAPは本命のS/4HANAに加えSalesforceとも競合するC/4HANAを発表し、中堅中小向けのSAP Business ByDesignの拡販にも力を入れている。そしてマイクロソフトも、365ブランドとなった「Dynamics 365」で巻き返しを図っている。
他にも国産のSaaSも増えており、日本市場においてはSaaSプレイヤーのポジショニングが徐々にはっきりしてきたようだ。中でも人財(HCM:Human Capital Management)中心のエンタープライズソフトウェアとして地位を固めているのがWorkdayだろう。
日本は技術先進国とのイメージがあるが、ことデジタルトランスフォーメーションとなると欧米諸国よりもかなり出遅れている。デジタルトランスフォーメーションへの取り組み状況を現場レベルで訊ねると、かなり自信がない声が聞こえてくる。「現場の従業員のレベルではスキルに対し不安があり、さらにマネージャーなどがスキル不足を十分にケアしてくれていないと感じているようです」と語るのは、ワークデイ株式会社 代表取締役社長のロブ・ウェルズ氏だ。
こういった不安を持ってしまうと、転職を考える社員も増えることになる。労働人口が減る中で優秀な人財の流出は企業にとって大きなマイナスだ。さらにデジタルトランスフォーメーションを先導できるような人財の育成には、多くの企業がかなり苦労している。これらの課題を抱える企業が増えていることで、Workdayへの関心が高まっているとウェルズ氏は言う。
「日本企業はこれまでコンサバでしたが、変化のための大きな決断を今迫られています。そして変化のためには、Workdayのようなツールが必要だと考えてくれているようです」(ウェルズ氏)
優秀な人材を維持し、企業の中で活躍の場を与える。さらに適切な教育や仕事のアサインで、より成長してもらう。そういったことが、Workdayを活用することで実現できる。これらはWorkdayが理想を語っているだけでなく、実際に成果として利用している企業に提供できている。それにより、Workdayが市場で高く評価されいるのだとウェルズ氏は言う。そして顧客からの高い評価を持続するため「営業部隊には新規顧客に対応するだけでなく、既存顧客の話にも良く耳を傾けるようにと言っています」とウェルズ氏。そのようにして得られた国内外の成功事例を紹介することで、さらに顧客のWorkdayの活用が広がりを見せるのだ。
「これまでのところ日本では、米国よりもヨーロッパ地域の企業の成功事例が参考になるようです。シーメンスやエアバスが、どのようなアプローチでWorkdayを活用するようになったのか、それらを紹介する機会が日本では増えています」(ウェルズ氏)
Workdayが日本でビジネス展開を本格的に開始したのは、2015年1月。その時の顧客ターゲットは、日本のグローバル企業だった。こう表現してしまうと、かなりターゲット企業は限られてしまうだろう。そこから日本でのビジネスも2年半ほどの時間が経過し、現状Workdayでは従業員数3,500人以上をメインターゲットとしている。
この条件だと、日本には800社以上の企業がある。それを日本法人だけではサポートしきれないので、パートナーとともにサポートしていく。そしてこれまでは日本企業の海外の支社などでいち早くWorkdayを採用し、そこから日本本社でも利用を開始する企業が多かった。それが日本でまず導入しそこから海外へ展開する企業が増えており、そのサポートに今力を入れているとのことだ。
現状の日本法人の体制だけでは、日本中の800社をサポートできない。そのため、パートナーとの協業体制を促進しなければならない。これにはWorkday認定資格を持った導入コンサルタントの育成が鍵となる。今のところ「パートナーからのWorkdayへのコミットもあり、認定資格を取得してくれるコンサルタントの育成は順調です。既に数100人規模のコンサルタントが誕生しており、これをさらに増やしていくことになります」とウェルズ氏。
ところでWorkdayでは、HCM(Human Capital Management)だけでなく会計のサービスも海外では提供している。HCMと会計を連携させることで、Workdayの価値をさらに高めているのだ。日本では残念ながら会計サービスの提供は遅れている。
「日本ではまず、HCMのマーケットドライブに重点を置いています。それと並行して、会計についての日本における要求を十分に把握しようとしています。これについては日本で会計を提供する十分な準備ができ次第、アナウンスします」(ウェルズ氏)