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NTTコム、AzureやAWSとの接続などサービス拡充

 4月7日、NTTコミュニケーションズは2015年度の「Global Cloud Vision」を発表した。買収による海外展開強化、他社クラウドとの接続オプション追加など、幅広くクラウド事業強化を打ち出した。

 NTTコミュニケーションズは2011年から毎年「Global Cloud Vision」として同社グループの企業向けサービスの展望を発表している。同日はクラウドを中心にグローバル展開している事業の達成度と今後提供するサービスや構想をまとめて発表した。登壇したNTTコミュニケーションズ代表取締役社長 有馬彰氏は「われわれはネットワーク(事業)から来ているので」と話し、長年培ったネットワーク技術の強みを差別化に生かし、さらなるクラウド事業の充実に努めたいという意気込みが伝わってきた。  

NTTコミュニケーションズ代表取締役社長 有馬彰氏

▲NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長 有馬 彰氏

 客観的な評価で見ると、同社グループのサービスは善戦している。ガートナー社が2015年1月に発表したMagic Quadrant(市場で競合する各企業の相対的な位置づけを示したレポート)によると、グローバルのネットワークサービス分野では2年連続で「リーダー」という主導的な立場にいると評価された。またIDC社が2014年10月に発表した次世代通信事業者評価レポートによるとAPAC地域で同社は「リーダー」に次ぐ「メジャープレーヤー」との位置づけとされた。国内外の評価機関においてもネットワークやクラウドで各種の賞を受賞している。  

 近年では「Global Cloud Vision」に基づき、サービス、オペレーション、セールスの3分野においてグローバルシームレス化を推進してきた。従来型だとサービスやオペレーションにおいて地域間の差異が出て各国間で調整が必要となっていたところ、ファクトリーモデルの導入で差異をなくしグローバルで統一を図る。  

 サービスとオペレーション分野でグローバルシームレス化に大きく寄与しているのがM&Aだ。近年同社は精力的にM&Aを進めてきている。2013年8月にフランスのコラボレーションサービス事業者 アルカディン社、同年10月にアメリカのデータセンター事業者 RagingWire社と同国 ネットワークサービス事業者 Virtela社の買収を発表した。さらに2015年3月3日にはドイツ最大のデータセンター事業者 e-shelterの株式取得に関する契約締結を発表したところ。6月までに株を取得する予定だ。  

 これらの買収によりサービスの拡充が加速している。特にe-shelter買収によりヨーロッパにおけるデータセンターは大きく増える。e-shelterではドイツのほかオーストラリアやスイスに主要なデータセンターを保有しており、買収によりサーバールームの面積にして7万平方メートルが上積みされる。ほかにも2015年はデータセンターの新規開設が続く。インド、中国香港、イギリス、アメリカなどで新規開設し、これらを合わせるとデータセンターは拠点数は130以上、面積は34.9万平方メートルに広がる予定だ。海外における勢力拡大にはかなり注力しているようだ。  

 さて2015年はどうか。注力する取り組みとして有馬氏が上げたのが「ネットワークと一体的に提供する“キャリアクラウド”の強化」、「仮想化/Software Defined化の加速」、「API機能の拡充」だ。  

 データネットワークは同社の強みでもある。クローズドネットワーク(グローバルなVPNサービス)「Arcstar Universal One」では今年から新たなオプションがいくつか追加される。「アドバンストオプション 仮想アライアンスタイプ」はVirtel社のサービスを活用し、クラウド型サービスとしてファイアウォール機能を提供する(日本では2015年2月から、海外では2014年8月から提供)。「グローバルモバイル(仮称)」オプションはモバイルアクセスサービスとなる。通信状況が不安定な新興国のバックアップ回線として、あるいは海外で迅速に拠点を展開するためにセキュアなモバイル回線を提供するものとなる(日本では提供中、海外では2015年9月)。  

 同じく「Arcstar Universal One」の「Virtual」オプションは新規海外拠点など「Arcstar Universal One」とは異なるネットワークからでもSDN(Software-Defined Network)でセキュアなオーバーレイ通信を可能とするもの(日本では提供中、海外では2015年5月以降)。有馬氏によると「世界初」だそうだ。  

 加えて注目されているのが「Arcstar Universal One」の「他社クラウド接続オプション(仮称)」だ。有料ではあるものの、「Arcstar Universal One」から安価に他社クラウドと接続できるというもの。他社クラウドと併用している顧客は多いため、必然的かもしれない。すでにSalesforceとの接続は提供中、Microsoft AzureやAmazon Web Serviceとの接続は2015年8月からを予定している。ほかにも順次拡大予定。  

 クラウドサービスとなる「Bizホスティング Enterprise Cloud」では、今後13ヶ国16拠点へと提供地域が拡大する。今後このサービスには「コロケーション接続オプション」として、SDNを活用してネットワークセグメントやIPアドレスを変更することなく既存のオンプレミスシステムをクラウドやコロケーション上に構築可能となる(日本では展開中、海外では2015年3月以降順次)。こちらも有馬氏によると「世界初」だそうだ。  

 また「Bizホスティング Enterprise Cloud」ではオラクルとの提携によりデータベースサービスが強化される。これまで提供していたOracle Database Standard Edition Oneなどは旧価格から最大90%となる大幅値下げとなり、新たにOracle Database Enterprise EditionやOracle WebLogic Serverなども新規提供開始となる(日本では2015年4月から、海外では順次)。オラクル社とクラウド事業者向けライセンス契約を締結できたのは日本のプロバイダーとしては初、世界では4社目となる。すでに自社のオンプレミス用にOracle Databseのライセンスを保有している場合でもそのままライセンスを持ち込むことも可能となる。  

 有馬氏が「12月までになんとかやりたい」と話していたのが「次世代クラウド基盤」と呼ばれるものだ。専有型(Hosted Private Cloud/ベアメタル)と共有型(Public Cloud)をSDNで組み合わせて提供し、カスタマーのポータルから一元的にマネジメントできるようにする。現在顧客がオンプレミスで稼働しているものを何らかのクラウドに移行して使えるようにすることを想定しているようだ。  

 クラウド型アプリケーションも拡充される。「Arcstar UCaaS」はIP電話、ボイスメール、在籍確認などのユニファイドコミュニケーションサービスでPBX機能を重視した[Ciscoタイプ]に加え、Microsoft LyncやMicrosoft Exchangeがセットで提供可能な[Microsoftタイプ]も提供開始となる(日本では2015年4月、海外では12月)。  

 運用管理面では顧客のICT環境を管理するサービス「マネージドICT(Global Management One)」の対象範囲拡大、およびセキュリティ管理サービス「WideAngle」ではSIEMエンジンの活用やFireEye社との連携でサービスがより強化される。統合カスタマーポータルとなる「ビジネスポータル」では利便性を向上し、2015年4月から提供される「APIゲートウェイ」ではシステム運用やSO(Service Order)の自動化などに活用できる。  

 最後に今後の注力分野として有馬氏が挙げたのが「IoTソリューションの推進」。言うまでもなくIoTの波は確実に現実に迫ってきている。同社では独自のSDN技術を活用して各種デバイスと同社サービス間のセキュア通信などを検討しているとのこと。すでに2015年3月には生産現場の機器状況の監視や分析システムにて実証実験を行い、各種技術要件を検証するなど研究は進めてきている。さらに4月からはウェアラブルセンサーで建設現場の作業従事者のバイタルデータを収集して安全管理システムの実証実験も開始する。  

 「ICTの最適化により、お客さまの経営改革に貢献します」と有馬氏は話していた。

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

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